相続登記でいちばん手間がかかるのは、実は申請そのものではありません。
「必要な書類を集めること」です。
とくに、亡くなった人の戸籍を生まれてからすべてそろえる作業は、相続登記の最大の山場と言ってよいでしょう。
逆に言えば、何が必要かを最初に把握し、段取りよく集めれば、登記は半分終わったようなものです。
この記事では、相続登記に必要な書類を一覧で整理し、その集め方のコツまで解説します。
戸籍集めを楽にする新しい制度も、あわせて紹介します。

必要書類は「3つのグループ」で整理する
相続登記に必要な書類は、数が多くて圧倒されがちです。
しかし、3つのグループに分けて考えると、ぐっと見通しがよくなります。
「被相続人に関するもの」「相続人に関するもの」「不動産と分け方を示すもの」の3つです。
まずは全体を、一覧表で押さえておきましょう。
| 区分 | 主な書類 | 役割 |
|---|---|---|
| 被相続人 | 出生〜死亡の連続した戸籍一式 | 相続人が誰かを確定する |
| 住民票の除票 | 住所の移り変わりを示す | |
| 相続人 | 相続人全員の現在の戸籍 | 生存などを確認する |
| 取得する相続人の住民票 | 新しい名義人の住所を示す | |
| 相続人全員の印鑑証明書(協議の場合) | 協議書の実印を裏づける | |
| 不動産・分け方 | 固定資産評価証明書 | 登録免許税を計算する |
| 遺産分割協議書/遺言書 | 分け方を示す(ケースによる) |
①被相続人に関する書類——「生まれてから」の戸籍が要る
まず必要になるのが、亡くなった人に関する戸籍です。
具体的には、被相続人が生まれてから亡くなるまでの、連続したすべての戸籍が必要です。
戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍といった、古い戸籍も含まれます。
これは、相続人が誰であるかを公的に確定するために欠かせません。
本籍を何度も移していたり、古い戸籍が含まれていたりすると、複数の役所に請求を重ねることになり、そろえるだけで時間がかかります。
あわせて、被相続人の住所の移り変わりを示す住民票の除票なども必要になります。
②相続人に関する書類
次に、相続人に関する書類です。
相続人全員の、現在の戸籍が必要になります。
これによって、相続人が現在も生存していることなどを確認します。
そして、その不動産を実際に取得する相続人については、住民票が必要です。
さらに、遺産分割協議によって分け方を決めた場合は、遺産分割協議書に加えて、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
協議書に押された実印が本物であることを、この印鑑証明書で裏づけるわけです。
誰がどの書類を用意するのかを早めに割り振っておくと、収集がはかどります。
③不動産と分け方を示す書類
最後に、不動産そのものと、その分け方を示す書類です。
まず、登録免許税という税金を計算するために、その不動産の評価額を示す「固定資産評価証明書」を取得します。
これは、不動産がある市区町村で発行されます。
分け方を示す書類としては、遺産分割で決めた場合は遺産分割協議書を使います。
遺言で決まっている場合は、遺言書を用います(自筆証書の場合は、検認済みのもの)。
なお、「法定相続情報一覧図の写し」を取得しておけば、分厚い戸籍の束の代わりに、これ1枚を提出すればよくなります。
複数の手続きを並行するなら、用意しておくと手続きが大幅に楽になります。
【業界の裏側】 「戸籍くらいすぐ取れる」と思っていたら、7通必要だった話
相続登記をご自身で進めようとされていたお客様から、「戸籍が思ったように集まらない」とご相談をいただいたことがあります。最初、お客様は「亡くなった父の戸籍を1通取ればいい」と考えておられました。ところが、相続登記で必要なのは、被相続人が生まれてから亡くなるまでの“連続した”戸籍一式です。お父さまは、就職や結婚、転勤のたびに本籍を移しておられ、たどってみると、改製原戸籍や除籍謄本まで含めて、全部で7通もの戸籍が必要でした。しかも、その本籍は複数の県にまたがっていたため、それぞれの役所に請求しなければならず、お客様は「これは想像以上だ」と驚かれていました。幸い、近年始まった戸籍の広域交付制度を使うことで、最寄りの窓口でまとめて請求でき、負担はかなり軽くなりました。それでも、ご自身だけで進めるなら、戸籍集めには相応の時間がかかると見込んでおくべきです。相続登記は「申請より準備」——この準備の大半が戸籍集めだということを、最初に知っておくと、心の余裕がまるで違います。
戸籍集めを楽にする「広域交付制度」
相続登記の準備で、最も骨が折れるのが戸籍集めです。
従来は、本籍地のある役所ごとに、1つずつ戸籍を請求する必要がありました。
本籍を各地に移していた人の場合、何ヶ所もの役所とやり取りすることになり、これが大きな負担でした。
この手間を軽くするのが、近年始まった戸籍の「広域交付制度」です。
これにより、最寄りの市区町村の窓口で、本籍地が他の地域にある戸籍も含めて、まとめて請求できるようになりました。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を一度に集めやすくなり、相続手続きの入り口の負担が大きく下がっています。
ただし、請求できる人の範囲や、対象となる戸籍に一定の制約もあります。
利用の際は、窓口で確認するとよいでしょう。

【営業マン視点】 書類集めは「誰が何を取るか」を最初に割り振る
相続の書類集めを見ていて、スムーズに進むご家族と、いつまでも終わらないご家族には、はっきりとした違いがあります。それは、最初に「誰が、何を取りに行くか」を割り振っているかどうかです。とくに印鑑証明書や現在の戸籍は、相続人それぞれが、自分の住む地域で取得する必要があります。これを段取りせずに、なんとなく「各自お願いね」で済ませると、「自分が取ると思っていなかった」「もう取ったと思っていた」と行き違いが起き、提出直前になって1人分だけ足りない、ということが起こります。私がお客様におすすめしているのは、必要書類の一覧を1枚作り、それぞれの欄に「担当者」と「取得済みかどうか」を書き込んでいく方法です。アナログですが、これだけで抜け漏れがぐっと減ります。連絡役の方が一覧を管理し、そろった書類を一人のもとに集約していく——この段取りができているご家族は、戸籍が多少多くても、驚くほど早く準備を終えられます。
まとめ——「準備が9割」、まず戸籍から動き出す
| この記事のポイント |
|---|
| 必要書類は〈被相続人〉〈相続人〉〈不動産・分け方〉の3グループで整理する |
| 被相続人は出生〜死亡の連続した戸籍一式が必要。1通では足りない |
| 協議で決めた場合は協議書+相続人全員の印鑑証明書を添付する |
| 不動産は固定資産評価証明書が必要。法定相続情報一覧図があると楽 |
| 戸籍は広域交付制度でまとめて請求可。誰が何を取るか早めに割り振る |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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