相続登記の中でも、とりわけ手強いケースがあります。
それが、何代にもわたって名義が放置されてきた不動産です。
「祖父名義のまま、父も亡くなってしまった」——そんな不動産は、決して珍しくありません。
義務化を機に、こうした「先祖名義のまま」の不動産の整理に取り組む人も増えています。
放置するほど解決が難しくなるこの問題は、今が着手の好機です。
この記事では、何代も放置された「数次相続」の不動産を、どう名義変更していくかを解説します。

数次相続とは何か
相続登記をしないうちに、相続人のひとりがさらに亡くなり、次の相続が発生することがあります。
これを「数次相続」といいます。
たとえば、祖父が亡くなったときに名義を変えないまま放置し、その後に父も亡くなった、というような状況です。
こうなると、祖父の相続と父の相続が積み重なります。
その結果、関係する相続人の数が、一気に増えていきます。
「権利者がねずみ算式に増える」状態が、まさにこれです。
会ったこともない遠い親戚が、相続人に含まれていることも珍しくありません。
| 項目 | 通常の相続 | 数次相続 |
|---|---|---|
| 状況 | 1つの相続を登記する | 複数世代の相続が積み重なる |
| 相続人 | 把握しやすい | ねずみ算式に増える |
| 戸籍集め | 比較的限定的 | 何代分も必要で膨大 |
| 現実的な対応 | 自分でも可能なことも | 専門家に依頼するのが安心 |
戸籍の収集が膨大になる
数次相続が起きている不動産の登記では、何代分もの相続関係を、戸籍をたどってすべて明らかにする必要があります。
亡くなった人それぞれについて、出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を確定していきます。
この作業は、非常に手間がかかります。
古い戸籍は手書きで判読が難しいものも多く、専門的な知識も求められます。
このため、数次相続が絡むケースでは、自分だけで対応しようとせず、司法書士などの専門家に依頼するのが現実的です。
費用はかかりますが、確実に、そして早く片づけられます。
「中間省略登記」という救済
数次相続では、本来であれば、世代ごとに1つずつ名義を変えていくことになります。
その分だけ、登録免許税や手間がかさんでしまいます。
しかし、一定の条件を満たす場合には、中間の名義変更を省略し、まとめて現在の相続人へ名義を移せることがあります。
これを「中間省略登記」といいます。
たとえば、中間の相続が1人だけの単独相続であった場合などに認められることがあります。
これによって、費用と手間を抑えられます。
適用できるかどうかの判断は専門的なので、ここでも専門家の力を借りるのが安心です。
【業界の裏側】 手書きの古い戸籍に、専門家でも頭を抱えた話
何代も名義が放置された土地の整理を、司法書士とともにお手伝いしたときのことです。たどっていくと、いちばん古い相続は、ずいぶん昔のものでした。取り寄せた戸籍は、活字ではなく、毛筆の手書き。しかも、現在は使われていない旧字体や、独特の言い回しで書かれており、誰がいつ生まれ、誰と誰が家族なのかを読み解くだけで、専門家でも相当な時間がかかりました。これを、知識のない方がご自身で正確に判読するのは、まず難しいでしょう。一方で、この案件には救いもありました。調べてみると、中間の世代の相続が単独相続だったため、中間省略登記が使えたのです。本来なら世代ごとに名義を移し、そのたびに登録免許税がかかるところを、まとめて現在の相続人へ移すことができ、費用も手間も大きく抑えられました。数次相続は、たしかに厄介です。しかし、専門家の知識と、こうした救済制度を組み合わせれば、きちんと整理できます。「先祖名義だから、もう手の打ちようがない」と諦める必要はないのです。
義務化された今こそ、整理の好機
古い不動産は、放置すればするほど、相続人が増えて解決が難しくなります。
共有者の1人が亡くなるたびに、その持分が次の世代へと枝分かれしていくからです。
今は十数人で済んでいる相続人が、数年後には、さらに増えているかもしれません。
つまり、数次相続の整理は、「早ければ早いほど楽」なのです。
相続登記が義務化された今は、こうした古い不動産に向き合う、ちょうどよいきっかけでもあります。
過去の相続も、2027年3月末までに申請する必要があるとされています。
先祖名義のまま放置されている不動産に心当たりがあるなら、義務化された今こそ、整理に着手する好機だといえます。

【営業マン視点】 「どうせ売れない」と諦めていた土地が、動き出した話
先祖名義のまま放置されている土地について、「もう何代も前の話だし、名義もぐちゃぐちゃだから、どうせ売れませんよね」と、半ば諦め顔でご相談に来られる方は少なくありません。たしかに、数次相続が絡む不動産は、そのままでは売れません。買主も銀行も、所有者がはっきりしない物件には手を出せないからです。しかし、私がいつもお伝えするのは、「整理さえすれば、売れる不動産に戻りますよ」ということです。実際、義務化をきっかけに重い腰を上げ、司法書士に依頼して相続人を確定し、名義をきれいに整えたお客様がいらっしゃいました。整理が終わって単独名義になった途端、それまで「塩漬け」だった土地に買い手がつき、無事に売却できたのです。お客様は「ずっと肩の荷だった土地が、最後はお金に変わった」と、本当に喜んでおられました。先祖名義の不動産は、放置すれば負担が増えるだけですが、整理すれば資産に戻ります。義務化された今は、その第一歩を踏み出す、またとない機会なのです。
まとめ——数次相続は「早く・専門家と」整理する
| この記事のポイント |
|---|
| 数次相続とは、登記しないうちに次の相続が重なって積み上がること |
| 相続人がねずみ算式に増え、戸籍の収集が膨大になる |
| 古い手書き戸籍の判読も難しく、専門家に依頼するのが現実的 |
| 条件が合えば中間省略登記で、費用と手間を抑えられる |
| 放置するほど難しくなる。義務化された今が整理の好機 |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。




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