相続登記の流れを知ると、次に浮かぶのが「これ、自分でできるのかな?」という疑問です。
結論から言えば、相続登記は、自分自身で行うことも、司法書士に依頼することも、どちらも可能です。
大切なのは、どちらが「正しい」かではありません。
自分の相続の内容に、どちらが合っているかです。
シンプルな相続なら自分で十分こなせますし、複雑な相続なら専門家に任せたほうが安心です。
この記事では、自分でやる場合と司法書士に頼む場合を比較し、自分に合った進め方の選び方を解説します。

自分でやる・司法書士に頼む——まずは比較
どちらを選ぶか迷ったら、まず両者の違いを並べて見るのが近道です。
| 観点 | 自分でやる | 司法書士に頼む |
|---|---|---|
| 費用 | 抑えられる | 報酬がかかる |
| 手間・時間 | 自分で書類集め・申請をする | 収集から申請まで任せられる |
| ミスのリスク | 自分で対応する必要がある | 専門家が防いでくれる |
| 向くケース | 相続人が少・分け方が明確・自宅のみ | 大人数・数次相続・遠方や複数・高額 |
大まかには、「相続がシンプルか複雑か」「自分の時間が取れるか」で方向性が見えてきます。
自分でできるケース
相続の内容が比較的シンプルな場合は、自分で相続登記を行うことも十分に可能です。
たとえば、相続人が少なく、遺産分割の内容もはっきりしていて、対象の不動産も自宅だけ、といったケースです。
法務局には、登記の手続きについて相談できる窓口があります。
予約をして、申請書の書き方などを教えてもらうこともできます。
費用を抑えられるのが、自分でやる最大の利点です。
平日に法務局へ行く時間が取れる人や、書類の作成を苦にしない人には向いています。
近年は、申請書の記載例なども整備され、自分で行うハードルは下がってきています。
司法書士に頼むべきケース
一方で、内容が複雑な場合は、登記の専門家である司法書士に依頼するのが安心です。
たとえば、相続人が大人数にのぼるケースがあります。
あるいは、何代も前の相続が手つかずで残っている、不動産が遠方や複数の地域にある、評価額が大きい、といったケースです。
こうした場合は、書類集めや判断が一気に難しくなり、自分だけで進めるのは負担が大きくなります。
また、仕事などで平日に動く時間が取れない人にとっても、書類の収集から申請まで任せられるのは大きな助けになります。
手続きのミスによる手戻りや、収集の漏れを防げる安心感は、報酬を払う価値が十分にあります。
依頼するのは「時間」と「確実性」を買うこと
司法書士に依頼すると報酬はかかります。
しかし、それは「時間」と「確実性」を買うことだと考えると、判断しやすくなります。
慣れない書類集めに何度も役所へ足を運ぶ手間。
書き方を誤って申請が通らないリスク。
期限に間に合わないかもしれないという不安。
こうした負担から解放されるのが、依頼することの価値です。
自分でやるか依頼するかに、絶対の答えはありません。
相続の複雑さ、自分の使える時間、そして安心料をどう考えるか——これらを天秤にかけて、無理のない方法を選ぶことが大切です。
【業界の裏側】 「自分でやる」と決めたものの、途中で行き詰まった話
費用を抑えたいからと、ご自身で相続登記を始められたお客様がいらっしゃいました。意気込みは立派でしたが、いざ取りかかると、その相続はかなり複雑なものでした。実は、対象の不動産が亡きお祖父さまの名義のまま残っており、いわゆる数次相続の状態だったのです。相続人をたどっていくと、いとこや、その子どもまで含めて、10人を超える人数になりました。中には、面識のない遠縁の方や、遠方に住む方もいらっしゃいます。お客様は、全国の役所から戸籍を集め、見ず知らずの親戚に連絡を取ろうとしたところで、すっかり行き詰まってしまいました。「ここまで複雑だとは思わなかった」と、最終的には司法書士に依頼されることになりました。結果的に、最初から専門家に頼んでいれば、もっとスムーズに、精神的な負担も少なく済んだはずです。「自分でできるか」は、費用だけで決めず、まず相続の複雑さを冷静に見極めること。シンプルなら自分で、複雑なら専門家へ——この見極めが、遠回りを防ぐ最初の分かれ道なのです。
司法書士をどう探すか
司法書士に依頼すると決めたら、次は誰に頼むかです。
探し方としては、知人からの紹介、金融機関や不動産会社からの紹介、司法書士会の相談窓口、インターネットでの検索などがあります。
相続登記は多くの司法書士が扱う一般的な業務なので、対応してくれる事務所は見つけやすいでしょう。
選ぶ際には、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
| 司法書士選びの確認ポイント |
|---|
| 相続の実績があるか |
| 費用の説明が明確か |
| こちらの質問に丁寧に答えてくれるか |
可能であれば、複数の事務所に問い合わせて、対応や見積もりを比べてみるとよいでしょう。

【営業マン視点】 売却を考えているなら、不動産会社経由という手もある
相続した不動産を「いずれ売るつもり」というお客様には、私はよくこうお伝えします。「売却を前提にしているなら、不動産会社を窓口にして司法書士を紹介してもらうのも、1つの手ですよ」と。多くの不動産会社は、相続登記を任せられる司法書士と提携しています。そのため、名義変更から売却まで、いわばワンストップで進めてもらえることが多いのです。相続登記を自分で済ませてから売却の相談に来られる方もいらっしゃいますが、最初から売却を見据えているなら、登記と売却を一連の流れとして任せたほうが、段取りがスムーズになります。書類のやり取りも一本化でき、「登記の次は何をすれば」と迷う時間も減ります。もちろん、ご自身で信頼できる司法書士を見つけて依頼するのも、まったく問題ありません。大切なのは、自分の出口——売るのか、住むのか、貸すのか——を見据えたうえで、それに合った頼み方を選ぶことです。
まとめ——「複雑さ」と「使える時間」で選ぶ
| この記事のポイント |
|---|
| 相続登記は自分でも司法書士でも可能。相続の内容で選ぶ |
| 相続人が少・分け方が明確・自宅のみなら、自分でも十分できる |
| 大人数・数次相続・遠方や複数・高額なら司法書士が安心 |
| 依頼は「時間」と「確実性」を買うこと。安心料をどう考えるかで判断 |
| 司法書士は実績・費用の明確さ・対応で選ぶ。売却前提なら不動産会社経由も |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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