相続税がいくらになるか——それを大きく左右するのが、不動産の「評価額」です。
同じ土地でも、評価のしかたによって、税額が変わってきます。
ところが、この評価額には、多くの人がつまずくポイントがあります。
1つは、土地と建物で評価の方法がまったく違うこと。
もう1つは、相続税の評価額が、売買のときの価格とは別物だということです。
この記事では、相続不動産の評価額とは何か、その大前提をわかりやすく整理します。

土地と建物で評価方法が違う
不動産といっても、土地と建物では、相続税の評価方法がまったく異なります。
まずは、この大前提を押さえることが、評価を理解する第一歩になります。
ざっくり言うと、土地は2つの方式のどちらかで計算し、建物は既存の数字をそのまま使う、という違いがあります。
それぞれが、どう評価されるのかを順に見ていきましょう。
土地は「2つの方式」で評価する
土地の評価には、大きく2つの方法があります。
1つが「路線価方式」、もう1つが「倍率方式」です。
| 方式 | 使う地域 | 考え方 |
|---|---|---|
| 路線価方式 | 市街地など、道路ごとに価格がある地域 | 道路に付された価格(路線価)×面積 |
| 倍率方式 | 上記以外の地域 | 固定資産税評価額×決められた倍率 |
どちらの方式を使うかは、その土地がどの地域にあるかによって決まります。
市街地など、道路ごとに価格が定められている地域では路線価方式を、それ以外の地域では倍率方式を用います。
自分で勝手にどちらかを選べるわけではなく、土地ごとに決まっている、という点を押さえておきましょう。
それぞれの具体的な計算方法は、この後の記事で詳しく見ていきます。
建物は「固定資産税評価額」をそのまま使う
一方、建物の評価は、土地よりもずっとシンプルです。
建物の相続税評価額は、原則として「固定資産税評価額」と同じ金額になります。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書や、市区町村で取得できる固定資産評価証明書で確認できます。
つまり、建物については、新たに計算をしなくても、すでにある数字をそのまま使えばよいのです。
土地のように方式を選んだり、補正を加えたりする必要は、基本的にありません。
評価でつまずきやすいのは、もっぱら土地のほう、というわけです。
相続税の評価額は「時価より低め」に出る
ここで知っておきたい、大切な特徴があります。
相続税を計算するための不動産の評価額は、実際の取引価格である時価よりも、低めになるように設計されているのです。
土地の評価に使う路線価は、国が公表する公示価格の、おおむね8割程度の水準です。
建物の評価に使う固定資産税評価額も、建築費の5割から7割程度になることが多くなっています。
このため、同じ金額を現金で持つよりも、不動産の形で持っているほうが、相続税の評価額は低くなります。
これが、不動産が相続税対策で注目される理由の1つでもあります。
【業界の裏側】 「近所の売り出し価格」で税額を心配していたお客様の話
相続税が心配だというお客様が、青ざめた顔でご相談に来られたことがあります。「うちの近所で、同じくらいの土地が5000万円で売りに出ているんです。だから、うちの土地も5000万円で評価されて、相続税がとんでもない額になるんじゃないかと」というのです。お客様は、近所の売り出し価格を、そのまま相続税の評価額だと思い込んでおられました。私は、ここに大きな誤解があることをお伝えしました。相続税を計算するときに使うのは、売買のときの価格そのものではなく、「相続税評価額」という別の物差しです。そして、この相続税評価額は、時価よりも低めに出るように作られています。土地の路線価は、公示価格のおおむね8割程度の水準ですから、近所の売り出し価格よりも、かなり低くなるのが普通です。実際に路線価をもとに計算してみると、お客様が心配していた額より、ずっと低い評価額になりました。お客様は「売り出し価格で計算して、勝手に怖がっていたんですね」と、ほっとした表情を見せられました。相続税の評価額は、売買価格とは別物——この一点を知るだけで、無用な不安の多くは消えるのです。
「価格」がいくつもある——物差しを混同しない
ここで1つ、用語を整理しておきましょう。
同じ不動産でも、目的によって、いくつもの「価格」が存在します。
| 価格の種類 | 何のための価格か |
|---|---|
| 時価(実勢価格) | 実際に売買される価格 |
| 公示価格 | 国が公表する標準的な土地の価格 |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税を計算するための価格 |
| 相続税評価額 | 相続税・贈与税を計算するための価格 |
これらはそれぞれ別の物差しで、金額も異なります。
このテーマで求めようとしているのは、最後の「相続税評価額」です。
固定資産税の通知書に書かれた額や、近所の売り出し価格を、そのまま相続税の評価額だと思い込んでしまう人は少なくありません。
しかし、それは別物です。
相続税には相続税専用の評価ルールがある——この点を最初に押さえておくと、混乱せずに済みます。

【営業マン視点】 「税金が安い評価額」と「売れる値段」は、別物です
不動産の評価について、お客様にぜひ知っておいてほしいことがあります。それは、「相続税の評価額」と「実際に売れる値段」は、まったくの別物だということです。相続税の評価額は、時価より低めに出るように作られています。これは、相続税を計算するうえでは、税負担が軽くなるという良い面があります。ところが、ときどき、この評価額を見て「うちの土地は、これくらいの値段でしか売れないのか」と勘違いされる方がいます。実際には、その逆です。相続税評価額は時価の8割程度ですから、市場で売れば、評価額よりも高い値段がつくのが普通なのです。私は、相続のお手伝いをするとき、この2つを必ず分けてご説明します。「相続税を計算するときは、低めの相続税評価額。実際に売るときは、それより高い市場価格」。この使い分けを知っておくと、税金の見通しも、売却の判断も、どちらも正しくできます。評価額の数字を、税金と売却、両方の場面でそのまま使ってしまうと、判断を誤りかねません。場面に応じて、正しい物差しを当てる——それが、不動産を上手に扱うコツなのです。
まとめ——土地と建物、そして「物差し」を区別する
| この記事のポイント |
|---|
| 土地と建物で評価方法が違う。土地は2方式、建物は既存の数字を使う |
| 土地は路線価方式か倍率方式。地域ごとにどちらを使うか決まっている |
| 建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になる |
| 相続税の評価額は時価より低め。現金より不動産が相続税で有利な理由 |
| 時価・公示価格・固定資産税評価額・相続税評価額は別物。混同しない |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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