不動産の評価方法を、ここまで見てきました。
最後に押さえておきたいのが、評価でよく起こる「間違い」です。
評価の誤りは、相続税を払い過ぎる原因にも、逆に後から追徴される原因にもなります。
とくに怖いのが「払い過ぎ」です。
払い過ぎた税金は、自分で気づいて手続きをしない限り、戻ってこないからです。
この記事では、評価でよくある間違いと、払い過ぎを防ぐための確認ポイントを解説します。

評価の間違いは「払い過ぎ」か「追徴」につながる
不動産の評価を誤ると、2つの方向で損をします。
1つは、評価を高くしすぎて、相続税を払い過ぎてしまうこと。
もう1つは、評価を低くしすぎて(あるいは財産を漏らして)、後から追徴されてしまうことです。
このうち、とくにもったいないのが、払い過ぎです。
追徴は、税務署が指摘してくれます。
しかし払い過ぎは、自分で気づいて手続きをしない限り、誰も教えてくれず、戻ってきません。
典型的な落とし穴を知っておくことで、こうした失敗を避けられます。
間違い①——減額要素や特例の見落とし
最も多く、そして最ももったいない間違いが、使えるはずの減額要素や特例を見落とすことです。
土地の形状による補正を反映しなかったり、適用できる小規模宅地等の特例を使わなかったりすると、評価額が本来より高くなります。
その結果、相続税を払い過ぎてしまいます。
そして、払い過ぎた税金は、気づかなければ戻ってきません。
とくに小規模宅地等の特例は効果が大きいため、適用できる土地がないかを必ず確認することが大切です。
「下げ忘れ」は、そのまま損失に直結すると心得ておきましょう。
間違い②——固定資産税評価額と相続税評価額の混同
もう1つよくあるのが、評価額の種類を取り違える間違いです。
建物は固定資産税評価額をそのまま使いますが、土地は路線価方式や倍率方式で計算するため、固定資産税評価額とは異なる金額になります。
「土地も建物も、固定資産税評価額でよいだろう」と思い込むと、土地の評価を誤ってしまいます。
固定資産税の計算に使う評価額と、相続税の計算に使う評価額。
この2つは、土地については別物だということを、はっきり区別しておく必要があります。
同じ「評価額」という言葉でも、何のための評価額なのかを、つねに意識しましょう。
間違い③——自分で評価することの難しさ
倍率方式や建物の評価は、比較的単純です。
しかし、路線価方式による土地の評価、とりわけ補正の判断は、専門的な知識が求められます。
同じ土地でも、評価する人の力量によって、減額要素の拾い方に差が出て、評価額が変わることさえあります。
実は、税理士であっても、相続を専門に扱っているかどうかで、この評価の精度に差が出ることがあります。
不動産の評価に不安がある場合は、相続税の実務に精通した専門家に依頼するのが、結果として最も損のない選択になります。
専門家の選び方については、後のテーマで詳しく取り上げます。
【業界の裏側】 申告後の見直しで、払い過ぎた相続税が戻ってきた話
あるお客様が、相続税の申告を済ませた後に、「本当にこの金額で正しかったのか、不安が残る」とご相談に来られたことがあります。当初の申告は、知り合いの税理士に依頼されたそうですが、その方は、ふだんは会社の決算など法人税を中心に扱っており、相続はあまり経験がなかったとのことでした。そこで、相続を専門に扱う税理士に、評価の内容を見直してもらいました。すると、相続された土地のいくつかに、本来反映できるはずの減額要素が、拾いきれていないことが分かったのです。間口や形状による補正のほか、適用できたはずの特例の使い方にも、改善の余地がありました。これらを正しく反映して計算し直すと、評価額が下がり、納めた相続税が本来より多かったことが判明しました。最終的に、所定の手続きをとることで、払い過ぎていた税金の一部が、お客様のもとに還付されました。相続税は、一度納めたら終わりではありません。評価の見落としによる払い過ぎは、気づいて手続きをすれば、取り戻せる場合があります。逆に言えば、気づかなければ、そのまま損をして終わるということ。だからこそ、評価には相続に強い専門家の目を通すことが、何より確実なのです。
払い過ぎを防ぐ「確認ポイント」
ここまでの内容を、払い過ぎを防ぐためのチェックリストとして整理しておきましょう。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| 減額要素を反映したか | 形・間口・がけ地・接道などの補正 |
| 小規模宅地の特例は使えるか | 適用できる土地がないか必ず確認 |
| 評価額の種類を取り違えていないか | 土地は固定資産税評価額≠相続税評価額 |
| 自分で判断が難しい部分はないか | 補正や特例は相続に強い専門家へ |
とくに、効果の大きい小規模宅地等の特例の確認は、欠かさないようにしましょう。
評価が固まれば、いよいよ申告へと進むことができます。

【営業マン視点】 同じ「税理士」でも、相続が得意かどうかで結果が変わる
相続のご相談でよく耳にするのが、「うちは昔から付き合いのある税理士さんがいるから、その人に頼みます」というお話です。長いお付き合いの専門家を信頼するのは、とても良いことです。ただ、1つだけお伝えしておきたいのは、「税理士なら誰でも相続に強いわけではない」ということです。税理士の仕事の多くは、会社の決算や、日々の税務です。相続税の申告は、件数としてはそれほど多くなく、ふだん相続をあまり扱っていない税理士もいます。とくに、不動産の評価は、補正や特例の判断に専門的な経験が要るため、相続を専門にしているかどうかで、評価額に差が出ることが実際にあります。同じ土地でも、減額要素をきちんと拾えるかどうかで、相続税が何十万円も変わることがあるのです。私がお客様にお伝えしているのは、「相続税、とくに不動産が絡む相続では、相続を専門に扱っている税理士を選びましょう」ということです。付き合いのある税理士に、まず「相続も得意ですか」と尋ねてみる。そのうえで、不動産が多いなら、相続専門の税理士の意見も聞いてみる。このひと手間が、払い過ぎを防ぐ、確実な一歩になるのです。
まとめ——「下げ忘れ」と「取り違え」を防ぐ
| この記事のポイント |
|---|
| 評価の誤りは「払い過ぎ」か「追徴」につながる。とくに払い過ぎは戻りにくい |
| 最も多い間違いは、減額要素や特例の見落とし(下げ忘れ) |
| 土地の評価で固定資産税評価額と相続税評価額を混同しない |
| 補正の判断は専門的。税理士でも相続の経験で精度に差が出る |
| 確認ポイントで点検し、不安があれば相続に強い専門家に依頼する |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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