誰が相続人になるかが分かったら、次に気になるのは「それぞれ、どれだけの割合をもらえるのか」です。
この割合についても、法律が1つの目安を定めています。
それが「法定相続分」です。
ただし、ここで大切なのは、この割合は絶対のルールではない、ということです。
あくまで「目安」であって、相続人全員が合意すれば、まったく違う分け方をすることもできます。
この記事では、配偶者・子・親・兄弟姉妹の取り分を早見表で示しながら、法定相続分の正しい使い方までをわかりやすく解説します。

法定相続分は「目安」にすぎない
最初に、いちばん大切な前提から確認しておきます。
法定相続分は、絶対に守らなければならないルールではありません。
あくまで、法律が示す「分け方の目安」です。
相続人全員が合意するのであれば、この割合どおりに分ける必要はまったくありません。
「実家を継ぐ長男が多めに、その代わり別の子は少なめに」といった分け方も、全員が納得すれば自由にできます。
では、この目安が実際に意味を持つのは、どんな場面でしょうか。
それは、話し合いがまとまらず、最終的に家庭裁判所が分け方を判断するような場面です。
つまり、まず目指すべきは全員が納得できる分け方であり、法定相続分は、その交渉の「出発点となる基準」だと考えるとよいでしょう。
組み合わせで割合が決まる【早見表】
法定相続分は、相続人の組み合わせによって変わります。
基本となる3つのパターンを、早見表で確認しましょう。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の取り分 | 血族の取り分 |
|---|---|---|
| 配偶者+子(第1順位) | 2分の1 | 子 全員で2分の1 |
| 配偶者+父母(第2順位) | 3分の2 | 父母 全員で3分の1 |
| 配偶者+兄弟姉妹(第3順位) | 4分の3 | 兄弟姉妹 全員で4分の1 |
| 配偶者がいない場合 | — | その順位の血族だけで全部 |
表を見ると、ある法則に気づきます。
順位が下がるほど、配偶者の取り分が大きくなっていくのです。
「2分の1 → 3分の2 → 4分の3」と整理して覚えると、混乱しにくくなります。
なお、配偶者がいない場合は、その順位の血族だけで全部を相続します。
同順位の人どうしは原則「均等」
同じ順位の相続人が複数いる場合は、その人たちの取り分を、原則として均等に分けます。
たとえば、配偶者と子が3人いるケースを考えてみましょう。
このとき、子全体の取り分である2分の1を、3人で均等に分けます。
つまり、子1人あたりの取り分は6分の1ずつになります。
ここで、子の立場について2つ補足しておきます。
かつては実子と養子、あるいは婚姻外の子で扱いが異なる時期もありましたが、現在は同じ立場の子は等しく扱われます。
一方で、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)は、父母の双方が同じ兄弟姉妹の2分の1の相続分になる、という例外的なルールもあります。
具体例で計算してみる
言葉だけではイメージしにくいので、簡単な例で考えてみましょう。
| ケース(遺産の総額) | それぞれの取り分 |
|---|---|
| 妻+子2人(遺産4000万円) | 妻2000万円/子1人あたり1000万円 |
| 子がおらず、妻+夫の母(遺産3000万円) | 妻2000万円/母1000万円 |
1つ目のケースでは、妻の相続分が2分の1、子2人で残りの2分の1を分けます。
そのため、子は1人あたり4分の1ずつ、つまり1000万円ずつとなります。
2つ目のように子どもがいない場合は、相続人が妻と夫の母になり、妻が3分の2、母が3分の1になります。
このように、誰が相続人になるかで、割合は大きく変わります。
ただし繰り返しになりますが、これはあくまで法律上の目安です。
実際には、不動産という分けにくい財産が含まれるため、きれいに割合どおりとはいかないのが現実なのです。
【業界の裏側】 「全部わたしのもの」と思っていた奥さまの話
お子さんのいないご夫婦で、ご主人が亡くなられたケースです。残された奥さまは、当然のように「夫の財産は、すべて自分が引き継ぐもの」と考えておられました。ところが、ご主人にはご健在の弟さんがいらっしゃいました。この場合、相続人は奥さまと弟さんになり、法定相続分は奥さまが4分の3、弟さんが4分の1です。つまり、自宅を含めた財産の4分の1について、弟さんにも権利があることになります。奥さまは「子どもがいなければ、配偶者が全部もらえる」と思い込んでおられたので、この説明にとても驚かれていました。幸い、弟さんが「兄の家のことだから」と相続分を主張されなかったため、円満に話がまとまりました。しかし、もし弟さんが4分の1を求めていたら、自宅を売って分けるしかなかったかもしれません。お子さんのいないご夫婦は、配偶者だけでなく、兄弟姉妹まで相続人に加わる——この点を、元気なうちに知っておくことがとても大切なのです。
「目安」だからこそ、話し合いが大切
ここまで法定相続分の割合を見てきましたが、最後にもう一度、大切な視点に戻ります。
不動産が絡む相続では、財産をきれいに割合どおりに分けることは、ほとんどできません。
たとえば、相続人が2人で、遺産が「実家の不動産1つだけ」だったらどうでしょう。
家を物理的に半分に割るわけにはいきませんから、誰かが住むのか、売って分けるのか、共有にするのか——という調整が必ず必要になります。
このとき、法定相続分は「交渉の出発点」として役立ちます。
「法律上の目安はこうだから、ここを基準に、お互いの事情を加味して決めていこう」と、話し合いの土台にできるのです。
割合をめぐって感情的にぶつかる前に、まず全員が同じ目安を共有しておくこと——それが、円満な分割への第一歩になります。

【営業マン視点】 「法定相続分どおり」にこだわりすぎる人ほど、話がこじれる
遺産分割のご相談を受けていて感じるのは、法定相続分を「絶対に守るべき正しい数字」だと思い込んでいる方が、意外と多いということです。もちろん、割合の目安を知っておくことは大切です。ただ、不動産が中心の相続では、その割合どおりにはまず分けられません。たとえば「私は法律で4分の1と決まっているのだから、家を売って現金で4分の1をきっちりもらう」と一方が主張すると、本当は誰も売りたくなかった実家を、手放さざるを得なくなることがあります。私がお客様にお伝えするのは、「法定相続分はゴールではなくスタートライン」だということです。誰が家に思い入れがあるのか、介護を担ったのは誰か、現金はどれだけあるのか——そうした事情を持ち寄って、全員が納得できる落としどころを探す。その交渉の土台として目安を使うのが、いちばん賢い向き合い方なのです。数字に縛られず、家族の事情ごと話し合えた相続ほど、後々の関係も穏やかに保たれています。
まとめ——割合は「出発点」、ゴールは納得できる分け方
| この記事のポイント |
|---|
| 配偶者+子は1/2ずつ、配偶者+父母は2/3と1/3、配偶者+兄弟姉妹は3/4と1/4 |
| 順位が下がるほど配偶者の取り分が大きくなる |
| 同じ順位の人どうしは原則均等。現在は実子・養子・婚外子を等しく扱う |
| 子のいない夫婦は、配偶者と兄弟姉妹が相続人になる点に注意 |
| 法定相続分はあくまで目安。全員が合意すれば自由に分けられる |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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