相続した不動産の分け方で、最も選ばれやすく、そして最も後悔されやすいのが「共有」です。
1つの不動産を、相続人みんなの共有名義にする。
その場では、いちばん平等に見えますし、話し合いもまとまりやすい方法です。
「とりあえず、みんなで持っておこう」——そう考えるご家族は、とても多いものです。
しかし、この「とりあえず共有」が、数年後、数十年後に大きな火種となって戻ってきます。
この記事では、不動産の共有がなぜ危険なのか、その理由と、すでに共有になっている場合の解消法までを解説します。

共有は「その場は平等」に見えてしまう
なぜ、多くのご家族が共有を選んでしまうのでしょうか。
理由は、共有がその場では最も平等に見えるからです。
「全員が同じ持分を持つ」というのは、いかにも公平で、角が立ちません。
誰かが「自分が引き継ぐ」と手を挙げる必要もなく、難しい調整も先送りにできます。
だからこそ、話し合いがまとまりやすいのです。
ところが、この「まとまりやすさ」こそが落とし穴です。
本来決めるべきことを決めないまま、問題を未来へ先送りしているだけだからです。
リスク①——共有だと自由に動かせない
共有の最大の問題は、その不動産を自由に動かせなくなることです。
共有名義の不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要になります。
賃貸に出したり、大規模な改修をしたりする場合にも、持分に応じた同意が求められます。
| やりたいこと | 必要になるもの |
|---|---|
| 不動産を売却する | 共有者全員の同意 |
| 賃貸に出す・改修する | 持分に応じた同意 |
| 自分の持分だけを売る | 単独で可能(ただし買い手がほぼいない) |
つまり、共有者の1人でも「売りたくない」と言えば、その不動産は売れません。
相続したときは全員が「いずれ売ろう」と思っていても、年月が経つうちに考えが変わります。
結局、誰も決められないまま塩漬けになる——これが共有の典型的な末路です。
自分の持分だけを売ることは、理屈のうえでは可能です。
しかし、共有持分だけを買う人はほとんどおらず、現実的ではありません。
リスク②——相続を重ねるたびに権利者が増える
もう1つの深刻なリスクが、時間とともに権利者がねずみ算式に増えていくことです。
共有者の1人が亡くなれば、その持分は、その人の相続人へと引き継がれます。
これを繰り返すうちに、共有者はどんどん枝分かれしていきます。
当初は兄弟2、3人だった共有者が、いとこや甥・姪、さらにその子どもまで含めて、何十人にも膨れ上がっていくのです。
近年問題になっている「所有者不明土地」が生まれる典型的な経路が、まさにこれです。
こうなると、全員の同意を取り付けることは、事実上不可能になります。
その不動産は、誰も活用できず、売ることもできません。
それでいて、固定資産税だけはかかり続ける——共有は、こうして「負動産」へと姿を変えてしまうのです。
【業界の裏側】 共有者が「13人」になっていた土地の話
ある土地の売却のご相談を受けたときのことです。お話を伺うと、その土地は、ご相談者のお祖父さまの名義のまま、何十年も放置されていました。お祖父さまが亡くなったとき、ご家族は分け方を決めず、相続人だった子どもたちの共有という形で、登記もしないまま時が過ぎていたのです。やがて、その子どもたち、つまりご相談者の親世代の方々も、お一人また一人と亡くなっていきました。そのたびに、持分はそれぞれの子へと引き継がれていきます。私が戸籍をたどって相続関係を整理したところ、その土地の権利を持つ人は、最終的に13人にまで膨れ上がっていました。中には、ご相談者が一度も会ったことのない遠縁の方や、連絡先すら分からない方もいらっしゃいました。売却には全員の同意が必要ですが、13人全員と連絡を取り、足並みをそろえることは、現実的にほぼ不可能です。結局、その土地は売るに売れず、ご相談者は「祖父の代でちゃんと分けておいてくれれば」と、ため息をついておられました。共有を放置した数十年が、これほど重い負担になる——その現実を、まざまざと見せつけられた一件でした。
すでに共有なら、早く解消に動く
以上の理由から、不動産の共有は、原則として避けるのが賢明です。
どうしても他に方法がなく共有を選ぶ場合は、せめて「いつまでに売却して解消する」といった期限や方針を、あらかじめ相続人の間で取り決めておくべきです。
では、相続によってすでに共有になってしまった不動産は、どうすればよいのでしょうか。
解消の方法は、いくつかあります。
| 解消の方法 | 内容 |
|---|---|
| 持分の買取 | 共有者の誰かが他の持分を買い取り、単独所有にまとめる |
| 全員で売却 | 共有者全員で合意し、第三者に売って代金を持分で分ける |
| 共有物分割請求 | 話し合いで解決しないとき、裁判所に求める(時間・費用大) |
いずれにしても、共有は早く解消するほど、関係する人数が少なく、話もまとまりやすいものです。
共有状態を相続してしまったら、放置せず、できるだけ早い段階で解消に向けて動き出すことをおすすめします。
先送りにすればするほど、解消はますます難しくなっていきます。

【営業マン視点】 売却の現場で、共有ほど厄介なものはない
不動産の売却に長く関わってきて、「共有名義の物件ほど厄介なものはない」というのが、私の率直な実感です。単独名義なら、所有者お一人の意思で話を進められます。ところが共有になると、買主が見つかり、価格にも納得していただいたのに、共有者のお一人が「やっぱり今は売りたくない」と言い出して、話が白紙に戻る——こんなことが、本当に起こります。私が経験したケースでは、共有者の中に、海外赴任中の方、認知症で施設に入られた方、そして長年連絡が途絶えている方がいて、全員の足並みをそろえるだけで一年近くかかりました。だからこそ、相続の分け方を決める段階のお客様には、私は強くお伝えしています。「その場の平等さに引かれて共有を選ぶと、その不便を、次は自分やお子さんが背負うことになりますよ」と。少し手間でも、代償分割や換価分割で、共有という状態をそもそも作らない。これが、未来の自分と家族を守る、いちばん確実な方法なのです。
まとめ——共有は「つくらない・残さない」が鉄則
| この記事のポイント |
|---|
| 共有はその場は平等に見えるが、問題を未来へ先送りしているだけ |
| 売却には全員の同意が必要。1人でも反対すれば塩漬けになる |
| 相続を重ねるたびに権利者が増え、所有者不明・負動産化していく |
| 解消法は持分の買取・全員での売却・共有物分割請求の3つ |
| そもそも共有をつくらないのが最善。すでに共有なら早く動く |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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