不動産の評価額は、画一的に決まるものではありません。
土地の条件や使い方、特例の適用によって、変わってきます。
これを踏まえて、評価額を適正な水準に抑えるための考え方を、ここで整理しておきましょう。
大切なのは、「不当に下げる」のではなく「正しく評価する」という姿勢です。
使える減額はきちんと使い、しかしやり過ぎない——この“さじ加減”が、健全な節税の核心です。
この記事では、評価額を適正に下げるための、4つの考え方を解説します。

「不当に下げる」のではなく「正しく評価する」
評価額を下げる、と聞くと、何か裏ワザのような印象を持つかもしれません。
しかし、目指すべきは、あくまで「正しく評価する」ことです。
不動産には、評価を下げる正当な要素がいくつもあります。
それらを見落とさず、きちんと反映させれば、評価額は適正な水準まで下がります。
これは、ルールに沿った正当な節税です。
一方で、制度を過度に利用して評価を不当に圧縮しようとすれば、後で否認されるリスクを負います。
「払い過ぎない」ことと「不当に逃れる」ことは、まったく別物だと心得ておきましょう。
この記事で扱う4つの考え方を、表で整理しておきます。
| 考え方 | ポイント |
|---|---|
| ①減額要素を漏らさない | 土地の形・間口・がけ地などを正しく反映する |
| ②現金より不動産 | 不動産は時価より低く評価される(生前対策) |
| ③行き過ぎない | 過度な評価の圧縮は否認されることがある |
| ④円満を優先 | 節税の都合で分け方を決め、家族を壊さない |
①減額できる要素を漏らさない
評価額を適正に抑える第一歩は、減額につながる要素を見落とさないことです。
前に見たとおり、土地には、形がいびつである、間口が狭い、がけ地を含む、道路との接し方に難があるなど、評価を下げる要因がさまざまにあります。
これらをきちんと反映させれば、評価額は適正な水準まで下がります。
逆に、こうした要素を見落として画一的に評価すると、本来より高い評価額になり、相続税を払い過ぎることになります。
土地の個性を、正しく評価に反映させること。
これが、適正な評価の基本です。
②現金より不動産のほうが評価は低い
これまで繰り返し触れてきたとおり、相続税の評価において、不動産は時価より低く評価されます。
同じ価値であれば、現金で持つよりも、不動産で持つほうが、評価額は低くなるのです。
この性質を利用して、生前に現金を不動産に換えておくことで、相続税の評価額を抑える、という考え方があります。
賃貸用の不動産であれば、さらに貸家建付地などの評価減も重なります。
ただし、これは生前の対策にあたります。
その具体的な進め方や注意点は、生前にできる相続対策を扱うテーマで、詳しく取り上げます。
③行き過ぎた節税は否認されることも
一方で、注意しておきたいことがあります。
評価額を下げる仕組みを過度に利用した、行き過ぎた節税は、税務上認められないことがある、という点です。
近年では、相続の直前に多額の借入をして不動産を購入し、評価額を極端に圧縮するような手法について、それが適正な評価とは認められないと判断された例もあります。
あくまで、制度の趣旨にかなった、適正な範囲での評価にとどめることが大切です。
「払い過ぎない」ことと「不当に逃れる」ことは違います。
正しい知識で適正に評価し、使える特例を堂々と使う——これが、健全な評価の姿勢です。
【業界の裏側】 「借金して買えば相続税が激減する」に飛びつきかけた話
ご相談に来られたお客様が、雑誌の記事を手に、興奮した様子でこうおっしゃいました。「相続の直前に銀行から多額の借金をして、評価額の低い不動産を買えば、相続税をほとんどゼロにできるそうですね。これをやりたいんです」と。たしかに、不動産は時価より低く評価されますから、理屈のうえでは、評価額を大きく圧縮できるように見えます。ただ、私は少し慎重になるようお伝えしました。こうした「相続直前の借入と不動産購入で評価を極端に圧縮する」手法については、近年、それが適正な評価とは認められない、と判断された例があるからです。あまりに露骨に、節税だけを目的とした手法は、後で否認され、想定外の課税を受けるリスクがあります。お客様には、税理士にも相談しながら、制度の趣旨にかなった、適正な範囲の対策に絞っていただくようお願いしました。減額できる要素を漏らさず使い、使える特例を堂々と使う。それだけでも、十分に税負担は抑えられます。「ゼロにする」ような極端な手法に飛びつくより、適正な範囲でコツコツ下げるほうが、結局は安全で確実なのです。
④節税より「円満」を優先する場面もある
評価額を下げることばかりに気を取られると、かえって相続全体がうまくいかなくなることもあります。
たとえば、小規模宅地等の特例を最大限に使おうとすると、「特定の相続人が自宅を相続し、住み続ける」といった条件を満たす必要が出てきます。
その分け方が、他の相続人にとって不公平に感じられ、対立を招くこともあるのです。
税負担を抑えることは大切ですが、それは円満な相続という土台があってこそ意味を持ちます。
節税の都合だけで分け方を決めて、家族の関係を損なっては、本末転倒です。
これまでのテーマでも触れたとおり、まず目指すべきは全員が納得できる分け方です。
その範囲の中で、使える特例を上手に活用する——この順序を忘れないことが大切です。

【営業マン視点】 「いちばん税金が安い分け方」と「家族が円満な分け方」は別
相続のお手伝いをしていると、ときどき難しい場面に出会います。それは、「税金がいちばん安くなる分け方」と、「家族みんなが納得する分け方」が、一致しないときです。税理士は、その役割として、税額が最も小さくなる分け方を提案します。それはプロとして当然のことです。たとえば「自宅は同居の長男が相続して特例を使い、長男が多めに受け取るのが、いちばん税金が安い」というように。ところが、その分け方が、他のごきょうだいから見ると「長男ばかり優遇されている」と映り、不満の火種になることがあります。私は、不動産の現場に立つ者として、税額の数字だけでなく、家族の気持ちの部分にも目を配るようにしています。数百万円の節税のために家族が決裂してしまっては、その後の人生で失うもののほうが、ずっと大きいかもしれません。大切なのは、税理士の出す「最も得な分け方」を、1つの選択肢として受け止めつつ、家族の納得感とのバランスで決めることです。節税は、円満という土台の上で初めて生きる——この順番を見失わないことが、本当に良い相続につながるのだと思います。
まとめ——「正しく下げる」を、円満の範囲で
| この記事のポイント |
|---|
| 目指すのは「不当に下げる」ではなく「正しく評価する」こと |
| 減額できる要素を漏らさない。見落とすと相続税を払い過ぎる |
| 不動産は時価より低く評価される。生前に現金を換える対策もある |
| 行き過ぎた評価の圧縮は否認されることがある。適正な範囲で |
| まず全員が納得できる分け方。その範囲で特例を活用する順序を守る |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。


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