相続した不動産に、自分や家族が住む——これも大切な選択肢の1つです。
とくに実家を相続した場合、思い出のある家に住み続けたい、あるいは住み替えの機会にしたい、という人もいるでしょう。
住居費を抑えられ、条件が合えば相続税の特例も使える、魅力的な選択です。
一方で、リフォーム費用や、他の相続人との公平など、注意すべき点もあります。
そして、「住む」もまた、将来へ続く選択です。
この記事では、実家に住むことのメリットと、判断のポイントを解説します。

住むことのメリット
自分や家族が住む最大の意義は、故人との思い出が詰まった家を、住まいとして残せることです。
経済面でも、新たに住居を買ったり借りたりする費用を抑えられます。
さらに、相続のタイミングでその家に住むことになれば、評価のテーマで見た小規模宅地等の特例の対象となり、自宅の土地の評価額を大きく下げられる場合があります。
とくに、被相続人と同居していた人がそのまま住み続けるケースでは、この特例が使いやすくなっています。
相続税の面でも、大きなメリットがあるのです。
思い出、住居費、そして税——住むことには、複数の面での利点があります。
住む際に注意すること
一方で、住むことを選ぶ際には、いくつか確認すべき点があります。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| リフォーム費用 | 古い家は、安全・快適に住むためにまとまった費用がかかることがある |
| 立地の利便 | 仕事・通学・生活の利便に合っているか |
| 相続人間の公平 | 1人が住むと不公平が生じることも。代償分割で調整 |
古い家であれば、安全・快適に住むために、まとまったリフォーム費用が必要になることがあります。
また、その家の立地が、自分や家族の仕事・通学・生活の利便に合っているかも重要です。
さらに、相続人が複数いる場合、1人がその家に住むことで、他の相続人との間に取り分の不公平が生じることがあります。
その場合は、遺産分割のテーマで見た代償分割によって、住む人が他の相続人に金銭を支払って調整するなどの配慮が必要です。
将来の出口も考えておく
住むという選択をするときも、その先のことを少し考えておくと安心です。
たとえば、自分がその家に住んだあと、最終的にその家をどうするのか。
将来、自分の子へ引き継ぐのか、いずれ売却するのか。
住み始めるときから、遠い将来の出口を完璧に決めておく必要はありません。
ただ、「いずれ手放す可能性もある」という視点を持っておくと、過大なリフォームを避けるなど、判断を誤りにくくなります。
住むこともまた、一時点の決断ではなく、将来へ続く選択なのだと捉えておきましょう。
相続人どうしの公平に配慮する
自分や家族がその家に住むことを選ぶ場合、ほかに相続人がいるなら、その人たちとの公平に配慮することが欠かせません。
価値のある実家に1人が住み続け、ほかの相続人は何も受け取れない、という分け方では、不満が残り、関係がこじれかねないからです。
遺産分割のテーマで見たとおり、こうしたときは代償分割を使います。
住む人がほかの相続人に、相応の金銭を支払って調整するのが一般的です。
そのためには、住む人に、ある程度の資金力が必要になります。
住むという選択は、自分たちの希望だけでなく、ほかの相続人がそれに納得できるか、公平な調整ができるか、という視点とあわせて考える必要があります。
家族の住まいを守ることと、相続人どうしの円満を保つこと。
この2つは、両立させたい目標です。
【業界の裏側】 「実家に住みたい」を、代償金の工面で実現した話
3人きょうだいの長女の方が、「親と暮らした実家に、これからも住み続けたい」と強く望んでおられたケースです。実家は評価額の高い物件で、主な遺産はその家がほとんどでした。長女が実家を1人で相続すれば、ほかのご兄弟2人は、何も受け取れないことになります。「それでは不公平だ」という声が上がり、話し合いは難航しました。ここで検討したのが、代償分割です。長女が実家を相続する代わりに、ご兄弟2人に、それぞれの取り分に見合う金銭を支払う、という方法です。ただ、ここで壁になったのが、資金でした。長女の手元には、代償金を一括で払えるほどの現金がなかったのです。私たちは、金融機関とも相談しました。相続した実家を担保に、長女が代償金分の融資を受けるという形を組み、無事に代償金を工面できたのです。これで、長女は思い出の実家に住み続けられ、ご兄弟2人も相応の金銭を受け取って、全員が納得できる形になりました。「実家に住みたい」という願いは、資金の裏づけがあって初めて叶うことがあります。住むという選択には、公平を保つための資金計画まで含まれるのだと、あらためて感じた一件でした。

【営業マン視点】 「一生住む」つもりでも、リフォームはやり過ぎない
相続した実家に住むと決められたお客様が、「どうせ一生ここに住むのだから」と、大がかりなリフォームを計画されることがあります。快適に暮らしたいというお気持ちは、よく分かります。ただ、私は「将来の出口も少しだけ意識して、リフォームはやり過ぎないほうがいいですよ」とお伝えしています。理由は、人生には、予想できない変化があるからです。実際、「一生住むつもり」で数百万円かけて全面リフォームをされたお客様が、その数年後、転勤や、ご家族の介護といった事情で、家を手放すことになったケースがありました。ここで問題になるのが、かけたリフォーム費用は、売却価格にはほとんど上乗せされないということです。自分好みに費用をかけた内装も、買い手にとっては価値と感じられないことが多く、リフォーム費は、ほぼ回収できずに終わってしまいます。もちろん、安全に関わる部分や、快適に暮らすための最低限のリフォームは必要です。ただ、「いずれ手放す可能性もゼロではない」という視点を持っておくと、自分の趣味に偏った過大な工事は避けよう、という判断ができます。住むための必要なリフォームと、回収できない過剰なリフォーム。この線引きを意識することが、後悔を防ぐコツなのです。
まとめ——メリットは大きい、公平と出口に配慮する
| この記事のポイント |
|---|
| 住めば思い出を残せ、住居費を抑えられる。特例で評価減も期待できる |
| 同居していた人が住み続けると、小規模宅地等の特例が使いやすい |
| 古い家のリフォーム費用、立地の利便を事前に確認する |
| 1人が住むと不公平が生じる。代償分割で調整し、資金計画も立てる |
| 将来の出口を意識し、回収できない過大なリフォームは避ける |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。


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