売買契約書には、標準的な契約条文に加えて、「特約」と呼ばれる個別条件が記載されます。
この特約部分は、物件ごとの事情や、売主・買主間で合意した内容を整理する部分です。
実務では、契約後のトラブルの多くが、この特約の認識違いから発生します。
重要事項説明ばかり意識し、特約部分を流し読みしてしまう買主も少なくありません。
しかし実際には、「あとで問題になる部分」は、特約に書かれていることが多いです。
契約書の最後に近い位置に記載されることもあり、疲れた状態で読み飛ばしやすい部分ですが、むしろ集中して確認する必要があります。
特約は「補足」ではなく、後から最も重要になる部分です。
現況引渡し特約とは何か
中古物件でよく見かけるのが、「現況引渡し特約」です。
これは、「現在の状態のまま引き渡す」という意味であり、売主は追加修繕や補修義務を負わないことを前提にしています。
つまり、引渡し後に小さな不具合が見つかっても、「現況で了承した」という扱いになる可能性があります。
中古住宅では一定の経年劣化があることを前提に売買されるため、この特約自体は珍しいものではありません。
ただし、買主側が「直してもらえると思っていた」という認識で契約してしまうと、後から大きな認識違いになります。
内覧時に気になった箇所については、
・引渡しまでに修繕するのか
・現況のままなのか
を契約前に明確にしておくことが重要です。
実務では、「口頭では直すと言っていた」というトラブルも珍しくありません。
修繕内容は、必ず契約書または特約へ記載してもらうことが基本です。
| 特約内容 | 意味 |
|---|---|
| 現況引渡し | 現在の状態のまま引渡す |
| 売主修繕なし | 追加補修義務を負わない |
| 修繕特約あり | 指定箇所のみ修繕して引渡す |
「現況です」と言われたら、“どこまで現況なのか”を確認することが大切です。
契約不適合責任の制限
「契約不適合責任」に関する特約も、非常に重要です。
契約不適合責任とは、引渡し後に契約内容と異なる欠陥や不具合が見つかった場合に、売主が一定の責任を負う制度です。
ただし、中古物件では責任範囲を制限するケースが一般的です。
例えば、
「引渡し後3ヶ月のみ責任を負う」
「雨漏りと白アリのみ対象」
「設備は免責」
といった形です。
個人売主の中古住宅では、「現況優先」の考え方が強くなる傾向があります。
そのため、「中古だから仕方ない」で済まされる範囲が想像以上に広いケースもあります。
実務では、引渡し後に給湯器故障や設備不良が発覚し、「売主負担になると思っていた」という認識違いが起きることがあります。
どこまでが責任対象なのかは、契約前に整理しておくことが重要です。
残置物・土地リスクの特約
家具・エアコン・照明器具などの残置物についても、特約で取り決めることがあります。
「エアコンは残す」
「不要家具は撤去する」
といった内容です。
これらを口頭だけで済ませると、後から「聞いていない」というトラブルにつながります。
内覧時や交渉中に合意した内容は、必ず契約書や特約へ反映してもらうことが重要です。
また、土地・戸建では、地下埋設物や土壌汚染に関する特約が記載されることもあります。
古家付き土地では、解体後に古い基礎やコンクリートガラが出てくるケースも珍しくありません。
撤去費用が数十万〜数百万円単位になることもあります。
「売主は把握していない」という特約が付く場合もありますが、それはリスクが存在しないことを意味するわけではありません。
不安がある土地については、契約前に追加調査を検討することも必要です。
「聞いていた」と「契約書に書いてある」は、実務では全く別です。
まとめ
売買契約の特約は、物件ごとのリスクや条件を整理する重要な取り決めです。
特に中古物件では、「現況引渡し」や「契約不適合責任の制限」が付くケースが多く、契約後の責任範囲は大きく変わります。
また、残置物や地下埋設物など、細かな条件も特約へ記載されます。
不動産契約では、「口頭で聞いた」ではなく、「契約書に書いてあるか」が重要になります。
契約前には、特約部分を最後まで丁寧に確認することが、後悔の少ない購入につながります。


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