相続した実家を売るとき、最も大きな節税効果を持ち得るのが、この制度です。
「空き家の3000万円特別控除」といいます。
売却益から、最大3000万円を差し引ける——実家の売却益が3000万円を超えることは多くないため、これが使えれば、譲渡所得税がゼロになることも珍しくありません。
効果は絶大ですが、そのぶん要件は細かく定められています。
そして、適用には期限と、確定申告が必要です。
この記事では、空き家の3000万円特別控除の中身と、使うための要件・手続きを解説します。

売却益から最大3000万円を控除
この特例は、相続した空き家を売って利益が出たとき、その譲渡所得から最大で3000万円を差し引けるというものです。
たとえば、売却益が3000万円であれば、控除によって課税される利益がゼロになり、譲渡所得税がかからなくなります。
実家の売却益が3000万円を超えるケースは多くないため、多くの場合、この特例が使えれば税負担を大きく抑えられます。
1つ知っておきたいのが、控除額の変更です。
2024年以降の売却では、その不動産を相続した相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額は2000万円に引き下げられています。
それでも効果は大きく、実家売却では真っ先に検討したい特例です。
主な要件
効果が大きいぶん、要件は細かく定められています。
主なものを、表で確認しましょう。
| 主な要件 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人が1人で居住 | 亡くなる直前まで1人暮らし(同居者がいた場合は対象外) |
| 古い建物 | 1981年(昭和56年)5月以前に建てられた建物 |
| 耐震改修 or 取り壊し | 改修して売るか、更地にして売る(2024年〜買主の対応も可) |
| 期限 | 相続開始から3年を経過する日の属する年末まで、かつ2027年末まで |
ポイントは、亡くなる直前まで被相続人が1人で住んでいた家であること。
そして、古い耐震基準の建物を、耐震改修するか、取り壊して更地にしてから売る、という点です。
2024年からは、買主が引き渡し後の翌年2月15日までに改修や取り壊しを行う場合も、対象に加わりました。
取得費加算とは「選択」になる
ここで注意したいのが、前の記事で見た「取得費加算の特例」との関係です。
この2つは、同じ不動産について両方を同時に使うことはできません。
どちらか有利なほうを選ぶことになります。
一般には、控除額の大きい空き家の特別控除のほうが有利になることが多いものの、ケースによって異なります。
どちらを選ぶのが得かは、売却益や納めた相続税の額によって変わります。
そのため、売却を考える際には、税理士に試算してもらうのが確実です。
いずれにせよ、これらの特例には期限があるため、早めの検討が肝心です。
適用には確定申告と「確認書」が必要
この特例を使うには、売却した翌年に確定申告を行うことが必要です。
これも、他の特例と同じで、税額がゼロになる場合でも、申告をしなければ特例は適用されません。
さらに、申告にあたっては、その不動産がある市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」という書類を取得して、添付する必要があります。
この確認書は、申請してから交付まで日数がかかることもあります。
そのため、売却が決まったら、早めに準備を始めるとよいでしょう。
要件が細かく、書類の準備にも手間がかかる特例ですが、使えれば数百万円単位で税負担が変わることもあります。
自分のケースで使えるかどうか、また必要な手続きについては、税理士や市区町村の窓口に確認しながら進めるのが確実です。
【業界の裏側】 「確認書」の存在を直前まで知らず、冷や汗をかいた話
相続した実家を、更地にして売却されたお客様のケースです。建物は古い耐震基準のもので、被相続人が1人で住んでおられた家。金額の要件も満たしており、空き家の3000万円特別控除が使えるはずでした。ところが、売買契約もまとまり、決済が近づいたころ、お客様が青ざめて連絡してこられました。「確定申告のときに、市区町村が出す『確認書』という書類が必要だと、今になって知ったんです。まだ何も手続きしていません」と。この「被相続人居住用家屋等確認書」は、その家が要件を満たすことを市区町村が証明する書類で、特例の適用に欠かせません。しかも、申請してから交付まで、日数がかかることがあります。私は、すぐに市区町村の窓口に連絡し、必要な書類をそろえて申請を進めるようお願いしました。幸い、確定申告の時期には間に合いましたが、準備がもう少し遅れていたら、ヒヤヒヤどころでは済まなかったかもしれません。効果の大きい特例ほど、こうした細かな書類の要件がついて回ります。「金額の要件を満たしているから大丈夫」と安心せず、必要な書類は何か、その取得にどれくらいかかるかまで、売却が決まったら早めに確認しておくこと——これが、特例を確実に使うための、地味だけれど大切なポイントなのです。
使えるか、早めに確認する
この空き家の特別控除は、要件が細かいぶん、「自分のケースで本当に使えるのか」の見極めが重要です。
被相続人が1人で住んでいたか、建物が古い耐震基準にあたるか、期限内に売れるか——これらを1つずつ確認していく必要があります。
とくに、耐震改修や取り壊しには、費用と時間がかかります。
また、市区町村の確認書の取得にも、日数を見込んでおく必要があります。
これらを考えると、「売れそうになってから慌てて確認する」のでは間に合わないこともあります。
相続した実家を売る可能性があるなら、早い段階で、この特例が使えそうかどうかを、税理士や市区町村に相談しておくのが安心です。
使えれば数百万円単位で変わる特例だからこそ、確認を後回しにしないことが大切です。

【営業マン視点】 「解体費」と「特例の節税額」を天秤にかける
空き家の3000万円特別控除を使うには、原則として、古い建物を耐震改修するか、取り壊して更地にする必要があります。ここで、現場ではよく悩ましい判断が生じます。取り壊しには、解体費がかかるからです。古い木造家屋でも、解体には百万円単位の費用がかかることが珍しくありません。「特例で税金は安くなるけれど、そのために大きな解体費を払う」——このバランスを、冷静に見る必要があります。私がお客様と一緒に考えるのは、「解体費を払ってでも、特例による節税額のほうが大きいか」という点です。多くの場合、3000万円控除の効果は解体費を上回りますが、売却益がそれほど大きくないケースでは、必ずしもそうとは限りません。ここで役立つのが、2024年からの制度の見直しです。買主が引き渡し後に取り壊しや改修を行う場合も、特例の対象に加わりました。これを使えば、売主が先に高い解体費を払わずに済むこともあります。「解体費は誰が、いつ負担するのか」を買主とも相談しながら、特例の適用と、手残りの最大化を両立させる。この設計こそ、相続した空き家を売るときの、腕の見せどころなのです。
まとめ——効果は絶大、要件・期限・確認書に注意
| この記事のポイント |
|---|
| 相続した空き家の売却益から最大3000万円を控除できる(相続人3人以上は1人2000万円) |
| 要件は、1人暮らし・1981年5月以前の建物・耐震改修または取り壊し・期限内の売却 |
| 取得費加算とは同時に使えず、有利なほうを選ぶ(税理士に試算を) |
| 確定申告と「被相続人居住用家屋等確認書」の添付が必要 |
| 解体費と節税額を天秤に。2024年〜買主の解体・改修も対象 |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。


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