収支計算の前提となる「家賃」をどう設定するかは、不動産投資の収益性に直接影響します。
家賃が高すぎれば空室が続き、低すぎれば収益が落ちます。
適切な家賃設定は、市場相場の把握と、物件の競争力の冷静な評価の上に成り立ちます。
「この家賃なら取れるはず」という主観的な見込みではなく、客観的なデータと市場の現実に基づいた家賃設定が、収支計算の精度を上げます。
また、家賃は購入時点の水準が永遠に続くものではなく、時間の経過とともに下落するリスクがあることも、計画に織り込む必要があります。

市場相場の調べ方
家賃相場を調べる基本的な方法は、賃貸物件ポータルサイトで同条件の近隣物件を検索することです。
投資対象の物件と同じエリア・同じ築年数帯・同じ間取り・同じ広さの条件で掲載されている物件の家賃を確認することで、市場相場の水準を把握できます。
この際、成約賃料(実際に入居者が決まった賃料)と募集賃料(現在掲載中の賃料)には差があることに注意が必要です。
実際の成約賃料は募集賃料より数パーセント低いことが多く、「掲載されている家賃=取れる家賃」とは限りません。
| 確認する項目 | 注意点 |
|---|---|
| 同エリア・同築年数・同間取りの家賃帯 | 条件を揃えなければ比較できない |
| 掲載期間が長い物件の存在 | 高すぎて埋まっていない可能性あり |
| 募集賃料と成約賃料のギャップ | 成約賃料は募集より数%低いケースが多い |
また、地元の賃貸管理会社にヒアリングをすることで、「このエリアの○○m²のワンルームならどのくらいの家賃で決まるか」というリアルな成約相場を把握できます。
ポータルサイトと管理会社ヒアリングを組み合わせることで、相場の精度が上がります。
物件の競争力を冷静に評価する
市場相場を把握した上で、自分の物件が周辺の競合と比べて優位なのか、それとも劣後しているのかを冷静に判断します。
この評価をせずに「相場通り」の家賃を設定すると、競合に対して埋もれた結果として空室が発生することがあります。
| 評価項目 | 入居者の判断材料 |
|---|---|
| 設備の充実度 | エアコン・温水洗浄便座・独立洗面台・浴室乾燥・宅配ボックス |
| 築年数と内装の状態 | 築年数だけでなくリフォーム履歴・現在の見た目 |
| 立地の優位性 | 駅距離・スーパー・コンビニ・学校への距離 |
| 建物の管理状態 | エントランス・廊下・ゴミ置き場の清潔感 |
競合より劣る要素が多ければ、相場より低めに家賃を設定する必要があります。
逆に競合より明らかに優れている要素があれば、相場より少し高めの家賃でも入居者が決まる可能性があります。
家賃下落リスクを織り込む
家賃は時間の経過とともに下落するのが一般的です。
築年数が経つにつれて建物の劣化が進み、周辺に新しい物件が建てば相対的に古い物件は競争力を失います。
また、入居者が長期間住み続けていた場合、その間に周辺相場が下落していて、退去後の次の入居者には大幅に家賃を下げて募集することになる、というケースも頻繁に起きます。
| 家賃下落の主要因 | 具体例 |
|---|---|
| 築年数の経過 | 築10年・20年と経つほど競争力が落ちる |
| 周辺の新築供給 | 同エリアに新築アパート・マンションが建つと相場全体が下落することも |
| 人口減少・需要低下 | エリアの賃貸需要が縮小すれば家賃も連動して下落 |
| 設備の陳腐化 | 入居者が当然と感じる設備水準が時代とともに上がる |
長期の収支シミュレーションでは、10年で5〜10%程度の家賃下落を見込んで計算するのが現実的です。
「現在の家賃が10年間維持される」という前提では、楽観的すぎる収支計画になります。
【業界の裏側】 「現状家賃」と「適正家賃」のギャップに注意
中古の収益物件を購入する際、レントロールに記載されている「現状家賃」が、現在の市場相場(適正家賃)より明らかに高いケースがあります。これは過去の高い家賃で契約した入居者がそのまま住み続けている状態です。この場合、現在の入居者が退去した後の次の入居者には、相場まで下げないと部屋が決まりません。「現状家賃」を前提に収支計算を組むと、退去のたびに家賃が下がっていく現実とのギャップに驚くことになります。物件購入前に「もし全員退去したら、現在の市場相場で何円取れるか」というシナリオで計算することで、本当の収益力が見えてきます。
「決まる家賃」を意識する
家賃設定で重要なのは、「取りたい家賃」ではなく「決まる家賃」を見極めることです。
高めに設定して空室期間が長引くと、結果的に年間の家賃収入は下がります。
たとえば月7万円で募集して2か月空室になるよりも、月6.5万円で募集して即決まる方が、年間収入は多くなることがあります。
| パターン | 年間家賃収入 |
|---|---|
| 月7万円・2か月空室 | 7万円×10か月=70万円 |
| 月6.5万円・空室なし | 6.5万円×12か月=78万円 |
このように、欲張った家賃設定はかえって収益を下げることがあります。
家賃設定の目的は「最高額を取ること」ではなく「年間収入を最大化すること」です。
空室期間と家賃水準のトレードオフを意識した設定が、現実的な収益を生みます。

【営業マン視点】 「想定家賃」の数字を鵜呑みにしない
物件資料に記載されている「想定家賃」は、売主や仲介業者が設定した数字であって、市場相場とは限りません。利回りを高く見せたいために、相場より高めの想定家賃が設定されているケースは少なくありません。「想定家賃8万円」と書かれていても、実際の市場相場が7万円なら、利回り計算の前提が崩れます。物件購入前に、提示された想定家賃が市場相場と整合しているかを必ず自分で確認してください。確認方法はシンプルで、同エリア・同条件の物件をポータルサイトで検索し、複数の事例から相場感を把握することです。
まとめ
| この記事のポイント |
|---|
| 家賃相場はポータルサイトと管理会社ヒアリングを組み合わせて把握する |
| 物件の競争力(設備・築年数・立地・管理状態)を冷静に評価して家賃水準を判断する |
| 10年で5〜10%の家賃下落を織り込んだ長期収支シミュレーションを行う |
| 「取りたい家賃」ではなく「決まる家賃」を意識し、年間収入の最大化を目指す |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
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