不動産投資の収支を正確に把握するためには、発生するコストを網羅的に把握しておく必要があります。
初心者が収支計算で失敗する最大の原因のひとつは、「家賃収入-ローン返済=手残り」という単純な計算をしてしまうことです。
実際には家賃収入とローン返済の間に、複数のコストが存在します。
これらを漏れなく計上しなければ、収支計算は絵に描いた餅になります。
物件を保有している間に発生する主なコストを整理しておきます。

固定的に発生するコスト
毎年固定的に発生するコストとして、まず「固定資産税・都市計画税」があります。
物件の評価額に基づいて毎年課税され、一般的には物件価格の0.1〜0.3%程度が目安とされますが、エリアや評価額によって変わります。
購入前に売り主から前年の固定資産税の納税通知書を確認することで、実際の税額を把握できます。
次に「火災保険料・地震保険料」です。
賃貸物件のオーナーとして建物に保険をかける必要があります。
保険料は建物の構造・築年数・保険内容によって異なります。
「管理委託費」も固定コストのひとつです。
管理会社に賃貸管理を委託する場合、賃料収入の5〜10%程度が管理委託費として毎月発生します。
入居者対応や家賃集金を管理会社に任せる代わりに払うコストです。
| コスト項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 物件価格の0.1〜0.3%(年間) |
| 火災保険・地震保険 | 年1〜5万円程度(構造・築年数で変動) |
| 管理委託費 | 賃料収入の5〜10%(毎月) |
区分マンション特有のコスト
区分マンションの場合、毎月「管理費」と「修繕積立金」が発生します。
管理費は建物の共用部分(エントランス・廊下・エレベーター)の清掃・設備保守などに使われる費用です。
修繕積立金は将来の大規模修繕に備えて積み立てておく費用です。
これらは建物の規模や築年数によって変わりますが、家賃に対する比率で見ると意外と大きな負担になります。
家賃8万円のワンルームで管理費・修繕積立金が合計1.5〜2万円というケースもあり、家賃の20〜25%が固定コストとして消えていく構造になります。
| 区分マンション特有のコスト | 注意点 |
|---|---|
| 管理費(共用部維持) | 月5,000〜15,000円程度。設備によっては高額になることも |
| 修繕積立金 | 月5,000〜15,000円程度。築年数とともに増額されるケースが多い |
| 大規模修繕の一時金 | 積立不足の場合は1室あたり数十万〜100万円超の追加負担も |
修繕積立金は築年数が進むにつれて段階的に増額されることが多く、購入時の金額がずっと続くわけではありません。
長期修繕計画書で将来の増額スケジュールを確認しておくことが重要です。
変動的に発生するコスト
固定コストとは別に、状況に応じて変動するコストもあります。
これらは予測が難しい分、収支計算で見落とされやすい項目です。
まず「入退去にかかる費用」があります。
入居者が退去すると、原状回復費用・クリーニング費用・次の入居者募集にかかる広告料(仲介手数料・AD)などが発生します。
退去のたびに数万円〜十数万円のコストがかかるのが一般的です。
次に「修繕費・設備更新費」です。
給湯器・エアコン・水回り設備など、賃貸物件には寿命がある設備が多数あります。
これらが故障すれば交換が必要で、給湯器の交換だけでも10〜20万円かかります。
また、外壁塗装・屋根防水・配管更新といった大規模修繕は、数年〜十数年に一度、数十万〜数百万円規模で発生します。
「空室時のコスト」も忘れてはいけません。
空室期間中も管理費・固定資産税・ローン返済は続きます。
家賃収入がゼロの間も、毎月のコストは発生し続けます。
| 変動コスト | 発生タイミング・目安 |
|---|---|
| 原状回復・クリーニング | 入居者退去時。3〜10万円程度 |
| 入居者募集の広告料(AD) | 入居者募集時。家賃1〜3か月分が目安 |
| 設備更新(給湯器・エアコンなど) | 寿命到来時。1件10〜30万円 |
| 大規模修繕(外壁・屋根) | 10〜20年に一度。数十万〜数百万円 |
| 空室時の継続コスト | 家賃収入ゼロでも管理費・税金・ローンは続く |
【業界の裏側】 「想定経費の総額」を業者に確認することで姿勢が見える
物件を購入する前に「この物件の年間ランニングコストはいくらと想定していますか」と業者に質問してください。良い業者であれば、固定資産税・保険料・管理委託費・修繕積立金などを具体的な数字で提示してきます。逆に「ケースバイケースなので一概には」「他のオーナーさんは大体○%です」といった曖昧な答えしか返ってこない業者は、買い手にコスト情報を正確に伝える姿勢が弱い可能性があります。コストの詳細を答えられる業者かどうかは、その後の付き合い方を決める重要な判断材料です。
家賃収入に対するコストの割合
すべてのコストを合計すると、家賃収入のどれくらいの割合になるのかを把握しておくことが重要です。
物件タイプ・築年数によって変動しますが、概ねの目安は次の通りです。
| 物件タイプ | 家賃収入に対するコスト割合の目安 |
|---|---|
| 区分マンション | 25〜35%(管理費・修繕積立金が固定で大きい) |
| 一棟アパート(築浅) | 15〜25% |
| 一棟アパート(築古) | 25〜40%(修繕費がかさむ) |
| 戸建(築古) | 大きく変動。突発修繕で年間収支がマイナスになるケースも |
これに加えてローン返済を差し引くと、手元に残るキャッシュフローは家賃収入の数%〜十数%にすぎないというのが現実です。
「家賃の半分以上は経費とローンで消える」という前提で収支計算する習慣をつけることが、現実的な投資判断につながります。

【営業マン視点】 「予備費」を持っておくことが安全な経営の条件
経験豊富な投資家ほど、収支計算とは別に「予備費」を手元に確保しています。給湯器の交換・退去後のリフォーム・空室期間中の補填——これらは突然発生するため、毎月のキャッシュフローだけでは対応できないことがあります。物件価格の5〜10%程度を予備資金として確保しておくことが、安心して賃貸経営を続けるための基本条件です。「フルローンで予備費なし」の状態でスタートすると、最初の数年で資金繰りが詰まるリスクが高くなります。コスト管理は「平常時の収支」だけでなく「想定外の備え」まで含めて考えることが重要です。
まとめ
| この記事のポイント |
|---|
| 固定コスト(税金・保険・管理委託費)と区分特有コスト(管理費・修繕積立金)を漏れなく計上する |
| 変動コスト(原状回復・募集広告料・設備更新・大規模修繕・空室時継続費)も見落とさない |
| 家賃に対するコスト割合は区分25〜35%・築古アパート25〜40%が目安 |
| 「家賃の半分以上は経費とローンで消える」前提で収支計算し、予備費も確保する |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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