不動産業界の電話営業は、外部から最も批判されやすい業務のひとつです。
「しつこい」「迷惑」「断っても何度もかかってくる」——こういったイメージが定着しています。
しかしその実態は業態によって大きく異なります。
反響への折り返し電話、売主へのフォロー架電、地主へのアプローチ電話——それぞれに性質が違い、求められるスキルも違います。
この記事では、不動産営業における電話の「種類と実態」を、現場目線で整理します。

不動産営業における電話の種類
| 種類 | 目的 | 難しさの核心 |
|---|---|---|
| 反響への折り返し | 問い合わせ顧客への初回接触 | 最初の1分で印象が決まる |
| 追客電話 | 案内後の継続フォロー | 頻度とタイミングの見極め |
| 地主・開拓電話 | 売却未検討層へのアプローチ | 断られることが前提の精神戦 |
反響への折り返し電話──勝負の最初の1分
反響営業における架電で最も重要なのが、問い合わせへの折り返し電話です。
この電話が「最初の1分で勝負が決まる」と言われるほど、最初の印象が重要です。
問い合わせてきた顧客は、同じ時間帯に複数の会社に問い合わせていることが多い。
そのため「折り返しが一番早かった会社」が最初のアドバンテージを持ちます。
ただしスピードだけでは不十分です。
- 声のトーン(明るすぎず、落ち着いた安心感)
- 最初の一言の内容(「売り込み感」ではなく「聞く姿勢」)
- 相手のペースに合わせた話し方
これらが揃ったとき、顧客は「もう少しこの人と話してみよう」という気持ちになります。
逆に、最初の電話で「とにかく来店させる」ことだけを目的にした話し方をすると、顧客は「売り込まれる」という警戒感を持ちます。
「いつ来れますか?」「明日でも来られますか?」というクローズの急ぎすぎは、かえって顧客を遠ざけます。
最初の電話での優先事項は「この人は自分の話を聞いてくれそうだ」という印象を残すことです。
追客電話──しつこさと丁寧さの境界線
一度案内をしてその日に成約しなかった顧客に対して、継続的にフォロー架電を行うことを「追客」と呼びます。
「あれ以来どうですか?」「新しい物件が出ました」——このような追客電話は、不動産仲介において日常的な業務です。
追客の難しさは「タイミングと頻度の見極め」にあります。
検討中の顧客にとって、適切なタイミングでの連絡は「気にかけてもらっている」という安心感につながります。
しかし頻度が高すぎれば「押し付け」になり、逆に顧客が離れます。
「顧客の検討ペース」を読みながら、「プレッシャーを与えない接触頻度」を保つことが追客の肝です。
結果を出す追客の共通点——「電話の目的が常にある」
追客で結果を出す営業マンには共通点があります。
「電話をかける目的が明確にある」という点です。
| 印象が悪い追客電話 | 印象が良い追客電話 |
|---|---|
| 「その後いかがですか?」だけで終わる | 「先日ご覧の物件に近い条件で新着が出ました」と情報を持って電話する |
| 週2〜3回かけ続ける | 顧客の検討ペースを読んで「意味のあるタイミング」に絞る |
| 「決断はまだですか?」とプレッシャーをかける | 「何か気になっている点はありますか?」と障害を取り除く姿勢で話す |
「また営業電話か」ではなく「情報を持ってきてくれる人」という印象を作れるかどうかが、追客の成否を分けます。
【業界の裏側】 追客の「頻度ルール」は会社によって真逆
追客の頻度について、会社によって指導方針が大きく異なります。「毎日かけろ」という会社もあれば「週1回まで」という会社もある。この違いが、入社後のやり方の根幹に影響します。面接や入社前に「追客の頻度についてどのような方針ですか?」と確認しておくことは、自分のスタイルと会社の方針が合うかどうかを見極めるうえで有効です。顧客への電話頻度は、会社の「営業文化」を映す鏡でもあります。
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地主・開拓電話──断られることが前提の精神戦
地場の売買仲介会社や買取業者では、地主や不動産オーナーに対して「売却のご検討はありませんか」という開拓電話をかけるケースがあります。
この種の電話は、相手がまったく売却を考えていない状態から始まるため、断られることが当然の前提です。
この業務で精神的に消耗する新人は多い。
「毎日何十件も電話して、ほぼ全員に断られる」という日々が続くと、「自分はこの仕事に向いていないのではないか」という気持ちが生まれやすい。
しかし経験者は口を揃えて言います。「断られることに慣れた段階から、本当の仕事が始まる」と。
開拓電話で成果を出す人の特徴
地主への開拓電話で成果を出す人の特徴は「会話を楽しめること」です。
すぐに売却につながらなくても、地主の話を聞き、関係を温め、「そのうち相談するとしたらこの人だな」という印象を残せる人が、数ヵ月後・数年後に連絡をもらいます。
この「種まきの電話」の価値を理解できるかどうかが、開拓営業の長期的な成果に直結します。

電話スキルを上げる3つの習慣
「電話が苦手」という人でも、意識して取り組むことでスキルは確実に伸びます。
現場で成果を出している営業マンが実践している習慣を3つ紹介します。
① 電話後に「振り返りメモ」を残す
電話を切った直後に「何を話したか」「顧客の反応はどうだったか」「次にかけるべきタイミングと理由」を30秒でメモする習慣を持つ人は、追客の質が上がります。
メモがないと、次の電話が「なんとなくの確認電話」になってしまいます。
② 「声のトーン」を意識的に調整する
電話は顔が見えないため、声だけで印象が決まります。
明るすぎると「売り込み感」が出る。
暗すぎると「頼りない」と思われる。
「落ち着いていて、かつ誠実な声」を意識的に作る練習は、入社直後から始めるべきスキルです。
③ ベテランの電話を「聞かせてもらう」
先輩の電話対応を横で聞かせてもらうことは、最も効率的な学習方法です。
「なぜあの言い方をしたのか」「どうしてそのタイミングで切り上げたのか」を後から質問することで、技術の裏側にある判断軸を学べます。
【営業マン視点】 「電話で急かしすぎる」新人が学ぶまでの道のり
新人のうちは、反響が来るたびにテンションが上がり「今週末に来てください!」と畳み掛けてしまいがちです。でも顧客の立場から見れば、問い合わせを送った直後に来店を迫られるのは圧迫感があります。この「急かしすぎ」に気づくには、実際に顧客に「少し急かされた感じがして…」と言われる経験が必要なことも多い。失敗から学ぶスピードが速い人は、同じ失敗を2〜3回繰り返すうちに「相手のペースに合わせる」感覚を掴みます。電話スキルは場数です。
まとめ:電話は「種類によって戦い方が違う」
不動産営業の電話は、種類によって目的も難しさもまったく異なります。
反響への折り返しは「最初の1分の印象」。
追客は「目的を持った頻度のコントロール」。
開拓電話は「断られながら種をまく忍耐力」。
どの種類の電話も、「相手のペースを読む力」と「目的を持って話す習慣」が共通の土台になります。
入社後の最初の数ヵ月、電話に慣れるまでの苦労は誰もが経験します。
しかしその苦労を越えた先に、「電話で関係を作れる営業マン」という大きな武器が待っています。

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