相続は、大きな財産が動き、当事者が不安や悲しみを抱える場面でもあります。
残念なことに、こうした状況につけ込もうとする、悪質な業者や詐欺的な勧誘も存在します。
大切なのは、彼らの手口を知り、身を守る方法を身につけておくことです。
身を守る鉄則は、「その場で契約しない」「1人で決めない」「必ず複数に相談する」——この3つ。
手口を知っていれば、多くの被害は防げます。
この記事では、ありがちな手口と、大切な財産を守るための対処法を解説します。

ありがちな手口
まず、どんな手口があるのかを知っておきましょう。
| 手口 | 内容 |
|---|---|
| 「無料引き取り」商法 | 「無料で引き取る」→後から高額な手数料を請求 |
| 高額商品の勧誘 | 相続金を狙い、不要なリフォーム・投資・保険を強引に |
| 買いたたき | 「高く買う」とうたい、相場より大幅に安く買おうとする |
よくあるのが、相続した不要な不動産をめぐる手口です。
「無料で引き取る」と持ちかけておきながら、後から高額な手数料を請求する、といったケースがあります。
また、相続でまとまったお金が入る人を狙って、必要のないリフォームや、リスクの高い投資、不要な保険などを強引に勧めてくる業者もいます。
「相続した不動産を高く買い取る」とうたいながら、相場より大幅に安く買いたたこうとする手口にも、注意が必要です。
不安や知識不足につけ込んでくるのが、こうした業者の常套手段です。
見分けるためのポイント
悪質な業者には、いくつかの共通した特徴があります。
| 警戒すべきサイン | 内容 |
|---|---|
| 契約を急がせる | 「今だけ」「すぐ決めないと損をする」と急かす |
| 説明があいまい | こちらの質問に、はっきり答えない |
| 金額が相場外れ | 提示する金額が、相場とかけ離れている |
| 書面を渋る | 書面化を嫌がる・不利な条件を小さな文字で紛れ込ませる |
こうした兆候が1つでも見られたら、警戒すべきサインです。
まっとうな専門家や業者は、急がせず、丁寧に説明し、書面を明確に示してくれるものです。
裏を返せば、「急がせる・あいまい・書面を渋る」相手は、それだけで疑ってよいということです。
身を守るために
身を守るための鉄則は、「その場で契約しない」ことです。
どれほど急かされても、一度持ち帰り、冷静に考える時間を持ちましょう。
そして、1つの業者の言うことをうのみにせず、必ず複数の業者や専門家に相談して、提示された条件が適正かを確かめます。
少しでもおかしいと感じたら、地域の消費生活センターなどの公的な相談窓口に問い合わせるのも有効です。
訪問販売などで契約してしまった場合でも、一定期間内なら契約を解除できる、クーリングオフという制度があります。
1人で抱え込まず、必ず誰かに相談することが、被害を防ぐ最大の防御策です。
「おかしいな」と感じたその直感を、大切にしてください。
不安なときこそ立ち止まる
悪質な業者は、相続直後の、心が不安定で判断力が鈍りがちな時期を狙ってきます。
大切な人を失った悲しみや、慣れない手続きへの不安の中では、冷静な判断が難しくなるものです。
だからこそ、何かを決断する前に、意識して立ち止まる習慣を持つことが、身を守ることにつながります。
うまい話、急かす話、不安をあおる話には、とくに警戒してください。
信頼できる家族や専門家に、「こんな話を持ちかけられたが、どう思うか」と一言相談するだけで、多くの被害は防げます。
1人で、しかも急いで判断しないこと。
これが、つけ込まれないための、何よりの心がけです。
【業界の裏側】 契約寸前で「持ち帰って相談」し、被害を免れた話
お母さまを亡くされて間もない、あるお客様のお話です。まだ気持ちの整理もつかない時期に、1本の電話がかかってきたそうです。「相続された、あの田舎の土地。使い道もなくてお困りでしょう。うちが、無料で引き取りますよ」と。持て余していた土地だったこともあり、お客様は、「無料で引き取ってもらえるなら、ありがたい」と、その場で話を進めそうになりました。ですが、相手が、「では、今日中に、こちらの書類にサインを」と、やけに急がせてきたことに、かすかな違和感を覚えられたそうです。そして、「一度、持ち帰って考えます」と伝え、電話を切られました。後日、その書類を、私のところへ持ってこられました。細かい文字で書かれた契約内容を、よく読んでみると——「引き取り」は無料でも、名義変更などの「手続き費用」として、数十万円を支払う、という条項が、しっかり紛れ込んでいたのです。しかも、その金額は、通常の相場から見ても、法外なものでした。もし、あの場でサインしていたら、お客様は、大きな出費を強いられていたことでしょう。お客様を救ったのは、たった1つ、「その場で契約せず、持ち帰った」という判断でした。急かされたときこそ、いったん立ち止まる。この鉄則が、いかに大切かを、改めて教えてくれた出来事でした。

【営業マン視点】 「急かす」時点で赤信号。不動産は必ず複数社に当たる
不動産の仕事を長くしてきた立場から、はっきりお伝えしたいことがあります。それは、「まっとうな業者は、契約を急がせない」ということです。私たちが、大切な財産のお取り引きをお預かりするとき、お客様には、じっくり考えていただきたいと願っています。他社さんと比べていただいて、まったく構いません。むしろ、比べたうえで選んでいただけたほうが、お客様も安心されますし、私たちも自信を持ってお付き合いできます。だからこそ、「今日決めてくれれば、この価格で」「他社に相談している時間はありませんよ」と、契約を急がせてくる業者は、それだけで、赤信号だと思ってください。なぜ急がせるのか。答えは簡単です。冷静に考えられたら、他社と比べられたら、都合が悪いからです。落ち着いて判断されると、契約してもらえない——だから、考える隙を与えず、その場で決めさせようとするのです。とくに、不動産の売却や買い取りでは、「必ず複数の会社に査定を出す」ことを、徹底してください。1社だけの言い値で決めるのは、非常に危険です。複数社に当たれば、適正な相場が見えてきますし、1社だけが極端に安い、あるいは怪しい条件を出していれば、すぐに分かります。急かされたら、一歩引く。不動産は、複数社に当たる。この2つを守るだけで、買いたたきや、悪質な取り引きから、ご自分の財産を、しっかり守ることができるのです。
まとめ——急かす話を疑い、その場で契約しない
| この記事のポイント |
|---|
| 「無料引き取り→高額手数料」「不要な勧誘」「買いたたき」などの手口がある |
| 急がせる・説明があいまい・金額が相場外れ・書面を渋る相手は警戒サイン |
| 鉄則は「その場で契約しない」。持ち帰り、複数に相談して適正か確かめる |
| おかしいと感じたら消費生活センターへ。クーリングオフできる場合もある |
| 不安な時期こそ立ち止まる。不動産は必ず複数社に当たる |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。


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