使い道のない土地を、国に引き取ってもらう——。
そんな道が、近年新しく設けられました。
「相続土地国庫帰属制度」です。
2023年に始まったこの制度は、相続した不要な土地を、一定の負担と引き換えに、国に引き取ってもらえるものです。
負動産に悩む人にとって、有力な選択肢の1つになります。
この記事では、制度の中身と、費用・要件・手続きの流れを解説します。

どんな制度か
相続土地国庫帰属制度は、2023年に始まった、比較的新しい制度です。
相続や遺贈によって取得した土地について、一定の要件を満たせば、所有権を国に引き渡し、手放すことができます。
ここで注意したいのは、対象になるのは相続などで取得した土地に限られる、という点です。
自分で買った土地は、対象外です。
長年持て余してきた地方の土地や、使い道のない山林などを、合法的に手放せる道として、利用が広がりつつあります。
売るに売れない負動産を抱えた人にとって、「国に引き取ってもらう」という選択肢が加わったのは、大きな意味を持ちます。
費用と要件
この制度を利用するには、費用がかかります。
| 費用 | 金額(目安) |
|---|---|
| 審査手数料 | 土地1筆あたり14,000円 |
| 負担金 | 原則20万円(宅地。森林などは面積に応じて変動) |
まず、申請の際に審査手数料として、土地1筆あたり14,000円が必要です。
そして、審査に通って承認されると、「負担金」を納めます。
これは、国が土地を管理するための10年分の費用にあたるもので、原則として20万円です(宅地は原則この額で、森林などは面積に応じて変わります)。
また、要件も厳しく定められています。
建物が建っている土地は対象外で、引き渡す前に解体が必要です。
担保権が設定されている土地や、境界がはっきりしない土地なども、利用できません。
手続きの流れと事前相談
この制度を利用する場合の流れは、おおまかに次のようになります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ①承認申請 | 土地を管轄する法務局へ申請し、審査手数料を納める |
| ②審査・現地調査 | 法務省が要件を審査し、現地を確認する |
| ③負担金の納付 | 承認されたら負担金を納める |
| ④国庫帰属 | 土地の所有権が国に移る |
申請から結果が出るまでには、半年から1年程度かかることもあります。
要件を満たすかどうかの判断は難しいため、申請を考えるなら、まず法務局の事前相談を利用するのが賢明です。
なお、相続人が複数で共有している土地は、共有者全員で申請する必要があります。
近年は、被相続人が全国に持っていた不動産を一覧で把握できる制度も整備が進んでおり、見落としていた土地の確認にも役立ちます。
使いどころと限界
この制度は、不要な土地を手放せる貴重な手段ですが、万能ではありません。
建物が建っていれば、引き渡す前に解体費用がかかります。
境界がはっきりしなければ、確定するための測量費用も必要になります。
負担金の20万円だけで済むとは限らず、要件を満たすためのハードルは、決して低くないのです。
それでも、費用をかけてでも、将来にわたる管理の負担やリスクから解放されたい、という場合には、大きな意味を持つ制度です。
「毎年かかる固定資産税や管理費、そして賠償リスクから、一度の費用で解放される」と考えれば、十分に検討する価値があります。
まずは法務局に事前相談し、自分の土地が要件を満たすか、費用がいくらになるかを確認することから始めましょう。
【業界の裏側】 「負担金20万円で手放せる」と思ったら、その前に…という話
相続した田舎の土地を持て余していたお客様が、この制度のことを知って、喜んでご相談に来られました。「負担金20万円を払えば、国が引き取ってくれるんですよね。それなら、ぜひお願いしたい」と。制度の趣旨は、そのとおりです。ただ、お客様の土地には、いくつかハードルがありました。まず、その土地には、古い建物が建ったままでした。この制度は、建物のある土地は対象外で、引き渡す前に解体して更地にする必要があります。その解体費だけで、負担金をはるかに上回る金額になりそうでした。さらに、隣の土地との境界が、あいまいなままでした。境界がはっきりしない土地は利用できないため、確定するための測量も必要で、これにも費用がかかります。つまり、「負担金20万円」の前に、解体費と測量費という、大きな出費が控えていたのです。私は、お客様に、これらの費用を含めた総額を試算してお見せしました。そのうえで、「まずは、この土地を引き取ってくれる民間の業者がいないか、探してみましょう」とご提案しました。国庫帰属は、あくまで最後の手段の1つです。「負担金だけで手放せる」というイメージだけで飛びつくと、思わぬ出費に驚くことになります。制度の全体像と、かかる費用の総額を正しくつかむこと——これが、後悔しないための第一歩なのです。

【営業マン視点】 国庫帰属は「最後の砦」。まず民間の出口を探す
相続土地国庫帰属制度は、負動産に悩む方にとって、大きな安心材料です。「いざとなれば、国に引き取ってもらう道がある」と知っているだけで、気持ちがずいぶん楽になります。ただ、現場の立場から申し上げると、この制度は「最後の砦」として位置づけるのがよいと考えています。理由は、この制度には、解体費や測量費といった費用と、半年から1年という時間がかかるからです。手放すために、まとまったお金を払い、長い審査を待つ——これは、決して軽い負担ではありません。ですから、私はお客様に、「国庫帰属を検討する前に、まずは民間で手放せる道を探しましょう」とお伝えしています。前の記事でも触れた、訳あり物件を専門に扱う買取業者。自治体の空き家バンク。あるいは、隣の土地の所有者が、自分の土地を広げるために買ってくれるケースもあります。こうした民間の出口で手放せれば、費用を抑えられたり、むしろ多少のお金を受け取れたりすることもあります。国庫帰属という制度があると知ったうえで、まずは民間の可能性を一通り当たってみる。それでも手放せないときの、確かな受け皿として国庫帰属を使う。この順番で考えるのが、賢い進め方なのです。
まとめ——「国に引き取ってもらう」道、ただし費用と要件に注意
| この記事のポイント |
|---|
| 2023年開始。相続・遺贈で得た土地を、負担金を払って国に引き取ってもらえる |
| 審査手数料は1筆14,000円、負担金は原則20万円(宅地。森林等は変動)が目安 |
| 建物付き・担保権あり・境界不明の土地は対象外。解体や測量が必要なことも |
| 申請は法務局へ。結果まで半年〜1年。共有地は全員で申請、まず事前相談を |
| 「最後の砦」として活用。まず民間で手放せないか探すのが賢明 |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。


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