相続した不動産の中でも、とりわけ扱いに困るのが空き家です。
そして、この空き家は今、全国で増え続け、大きな社会問題になっています。
実は、その空き家を生み出す最大の引き金が、「相続」です。
親の家を相続したものの、戻って住む予定はなく、どうするかも決められない——。
この「決められないまま放置」が、空き家を生み続けています。
この記事では、空き家問題の現状と、相続との深いつながりを解説します。

増え続ける空き家
日本では、人口の減少と高齢化を背景に、空き家の数が増加の一途をたどっています。
総務省の調査でも、空き家は年々増え続けており、その総数は全国で約900万戸に達し、住宅全体に占める割合も過去最高の水準となっています(総務省の住宅・土地統計調査より。最新の数値は総務省の公表資料でご確認ください)。
かつては地方の問題と思われていましたが、近年は都市の近郊でも空き家が目立つようになりました。
もはや、一部の地域に限った話ではなくなっています。
誰も住まず、活用もされないまま放置された家は、防災や防犯、景観の面で、地域全体に影響を及ぼします。
空き家問題は、いまや日本社会全体の課題なのです。
相続が空き家を生む、大きな引き金
空き家が生まれる最も大きなきっかけの1つが、相続です。
その典型的な流れを、整理してみましょう。
| 段階 | 状況 |
|---|---|
| 相続 | 親と離れて暮らしていた子が、実家を相続する |
| 生活拠点は別 | すでに自分の拠点があり、戻って住む予定がない |
| 決められない | どうするかも決められず、そのままにする |
| 空き家化 | 誰も住まない空き家になる |
遺産分割がまとまらなかったり、共有のまま誰も決められなかったりすると、空き家化はさらに進みます。
相続は、空き家問題の最大の供給源だといっても過言ではありません。
誰にとっても他人事ではない
こうした空き家の問題は、特別な人だけに起こることではありません。
持ち家のある親を持つ人なら、誰もがいつか直面しうる、ごく身近な問題です。
「うちの実家は大丈夫」と思っていても、いざ相続が起きてみると、誰も住まず、売るにも売れない家を抱えてしまう、ということは十分にあり得ます。
とくに、地方にある古い家や、駅から遠い家は、注意が必要です。
だからこそ、空き家の問題を自分のこととして捉えることが大切です。
放置するとどうなるのか、どんな手段があるのかを、あらかじめ知っておくことに意味があります。
「知っている」だけで、いざというときの動きは、大きく変わります。
「そのうち何とかする」が危ない
空き家がこれほど増えてしまう背景には、所有者の「そのうち何とかしよう」という先延ばしの心理があります。
相続した直後は、ほかの手続きに追われ、空き家のことまで手が回りません。
落ち着いたころには、どうするか決めるのが億劫になり、「とりあえず今のまま」を続けてしまいます。
こうして、1年、また1年と時が過ぎ、気づけば建物は傷み、解決はますます難しくなっていきます。
空き家問題の本質は、特別な事情というより、誰もが陥りがちな、この先延ばしにあります。
だからこそ、相続した家に住む予定がないとわかった時点で、できるだけ早く方針を考え始めることが、何より重要です。
【業界の裏側】 5年放置された実家が、見る影もなくなっていた話
あるお客様から、「相続した実家を、そろそろ売ろうと思うので見てほしい」と、ご相談をいただきました。相続してから、すでに5年が経っているとのことでした。現地に着いて、私は言葉を失いました。庭は、人の背丈を超える草木に覆われ、玄関にたどり着くのもひと苦労。家の中に入ると、屋根から雨漏りした跡があちこちにあり、天井や床は腐り始め、独特のにおいが立ちこめていました。相続された当初は、まだ十分に人が住める、きれいな家だったそうです。あのとき売りに出していれば、住宅として、それなりの価格で売れたはずでした。しかし、5年の放置の間に、建物は急速に傷み、もはや「住宅として」は売れない状態になっていました。買い手を探すなら、「解体して更地にする前提」で、土地の値段から解体費を引いた、かなり低い価格を覚悟せざるを得ません。「あのとき、すぐに動いていれば」——お客様は、深いため息をつかれていました。空き家は、放置した年数のぶんだけ、確実に価値を失います。「そのうち」と先延ばしにした5年が、数百万円という差になって返ってくる。これが、空き家放置の、厳しい現実なのです。

【営業マン視点】 最大の空き家対策は、親が元気なうちの「ひと言」
空き家のご相談を数多く受けてきて、つくづく思うことがあります。それは、「空き家になってから動くのは、本当に大変だ」ということです。相続が起きてから、どうするか一から考え、相続人みんなの意見をまとめ、傷んだ家を何とかする——これには、大変な労力がかかります。だからこそ、私が皆さんにお伝えしたいのは、「最大の空き家対策は、親御さんが元気なうちの、ひと言の会話です」ということです。「この家、将来どうしようか」——たったこれだけの会話を、親御さんが元気なうちにしておくだけで、いざというときの動きは、まったく変わります。親御さんの希望は何か、兄弟はどう考えているか、売るとしたらいくらぐらいか。こうしたことを、あらかじめ共有しておけば、相続が起きたとき、慌てず、もめず、スムーズに方針を決められます。「縁起でもない」と、こうした話を避けるご家庭は多いものです。ですが、この会話から逃げることこそが、将来の空き家を生む、いちばんの原因なのです。重い話にする必要はありません。帰省したときにでも、「この家どうしようね」と、軽く切り出してみる。その小さな一歩が、家族を空き家問題から守る、最も確実な対策になるのです。
まとめ——空き家問題は身近な問題、カギは「早さ」
| この記事のポイント |
|---|
| 空き家は全国で増え続け、都市近郊にも広がる社会問題になっている |
| 相続は空き家の最大の供給源。別居の子が実家を相続して放置する流れが典型 |
| 持ち家のある親を持つ人なら、誰もが直面しうる身近な問題 |
| 「そのうち何とかする」の先延ばしが、空き家を生む本質的な原因 |
| 住む予定がないと分かった時点で、早く方針を考え始めることが重要 |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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