家族が亡くなると、悲しむ間もなく、さまざまな届け出や手続きが押し寄せてきます。
これらは相続そのものの手続きではありませんが、避けては通れず、しかも期限が短いものが多いため、最初の関門になります。
「何から手をつければいいのか分からない」——ご相談の現場でも、この時期がいちばん混乱しやすい場面です。
でも、やるべきことを「いつまでに」で整理してしまえば、慌てずに進められます。
この記事では、親が亡くなった直後から葬儀後にかけて、何を、どの順番でやればよいのかを解説します。
そして、この時期に絶対やってはいけない”ある失敗”についても、あわせてお伝えします。

葬儀後の手続きは「期限が短い」ものが多い
親が亡くなった直後の手続きには、ひとつ大きな特徴があります。
それは、「期限が数日〜2週間程度と短い」ものが多いことです。
相続放棄の3ヶ月や相続税の10ヶ月といった期限の前に、まずこの「短い期限」の届け出をこなす必要があります。
これらは役所や年金事務所への届け出が中心で、放置すると後で返還を求められたり、手続きが滞ったりします。
幸い、ひとつひとつは難しいものではありません。
「いつまでに、何を」をリストにして、上から片づけていけば大丈夫です。
時期別・やることリスト
死亡直後から落ち着くまでにやることを、時期の目安ごとに整理しました。
| 時期の目安 | 主な手続き |
|---|---|
| 7日以内 | 死亡届の提出(死亡診断書を添付)→火葬・埋葬の許可 |
| 10〜14日以内 | 世帯主変更届、年金の受給停止の届け出 |
| 葬儀後すみやかに | 健康保険証の返却、葬祭費・埋葬料の請求 |
| 落ち着いてから | 公共料金・携帯・サブスクの名義変更や解約、財産の調査 |
最初に行うのが、死亡届の提出です。
死亡の事実を知った日から7日以内に、医師が作成する死亡診断書を添えて、市区町村の役所に提出します。
これを出すことで火葬・埋葬の許可が下り、葬儀へと進めます。
葬儀社が代行してくれることも多いため、実務上はそれほど負担になりませんが、相続手続きの起点となる重要な届け出です。
葬儀が一段落したら、年金の受給停止や健康保険証の返却を進めます。
年金を受給していた場合、止める届け出が遅れて受け取り続けると、後で返還を求められるので注意が必要です。
「捨てない・解約を急ぎすぎない」が初動の鉄則
この時期に、いちばん気をつけたいことがあります。
それは、故人宛ての郵便物や書類を、安易に処分しないことです。
通帳、保険証券、不動産の権利証や固定資産税の納税通知書、借入の明細、クレジットカードの請求書——。
こうした書類は、後の財産調査で「何があるのか」を知るための、大切な手がかりになります。
遺品整理で一気に片づけたくなる気持ちは分かりますが、判断に迷うものは、まず保管しておくのが安全です。
もう1つ注意したいのが、解約や名義変更を急ぎすぎないことです。
故人の預金を引き出して使うなど、相続財産に手をつけてしまうと、後で「単純承認した」とみなされ、相続放棄ができなくなる場合があります。
「借金があるかもしれない」と少しでも感じるなら、財産にむやみに触れる前に、まず全体を調べることを優先してください。
【業界の裏側】 良かれと思って片づけた書類の山が、財産調査を振り出しに戻した
あるご相談で、財産調査にとても苦労されたご家族がいました。きれい好きのお母様を亡くされた後、ご遺族は「散らかったままでは故人もかわいそう」と、葬儀のあと早々に、たまっていた郵便物や書類をまとめて処分されたのです。お気持ちは、とてもよく分かります。ところが、いざ相続財産を調べる段になって、困ったことになりました。どの銀行に口座があるのか、どんな保険に入っていたのか、不動産の固定資産税の通知はどこか——その手がかりになる書類が、ほとんど残っていなかったのです。結局、思い当たる金融機関に一つひとつ問い合わせ、役所で名寄帳を取り直し、ゼロから財産を洗い出すことになりました。捨ててしまった通知書が1枚あれば、すぐ分かったはずのことに、何週間もかかってしまったのです。故人宛ての書類は、財産の「地図」のようなものです。迷ったら捨てずに、まず箱にまとめて保管しておく——それだけで、後の手間は大きく変わります。
迷ったら「期限が短いもの」から手をつける
やることが多くて、何から手をつければいいか迷ったときの基準は、シンプルです。
「期限が短いもの」と「放置すると不利益が大きいもの」を、優先してください。
死亡届のように数日単位の期限があるもの、年金の停止のように遅れると返還が生じるものを、先に片づけます。
一方、相続財産の調査のように時間のかかる作業は、並行して少しずつ進めれば大丈夫です。
なお、葬儀の費用は、一般に相続財産から支払っても相続放棄の妨げにはならないと考えられています。
ただし、高額な香典返しや過大な支出は、後で争いの種になることもあります。
領収書を残し、「何にいくら使ったか」を記録しておくと、後の精算や話し合い、相続税の申告が必要になった場合にも役立ちます。
慌ただしい時期ですが、記録を残しておく習慣が、後の自分を助けてくれます。

【営業マン視点】 悲しみの中で、「全部やろう」としなくていい
親御さんを亡くされた直後のお客様は、悲しみと疲れの中で、それでも「やらなきゃ」と気を張っておられることが多いです。役所、年金、保険、銀行、解約……次々と押し寄せる手続きを前に、ご自分を追い込んでしまう方も少なくありません。そういうとき、私がまずお伝えするのは、「全部を今やらなくて大丈夫ですよ」ということです。本当に急ぐのは、死亡届や年金の停止など、期限が短い一部の手続きだけ。財産の調査や名義変更は、少し落ち着いてからでも間に合います。むしろ、気持ちが落ち着かないうちに、慌てて解約や処分を進めるほうが、後で「あれは取っておけばよかった」と後悔につながりがちです。だから私は、「急ぐものだけ片づけて、あとは一息ついてからにしましょう」とお声がけしています。手続きは逃げません。まずは、ご自身とご家族の時間を、少し大切にしてあげてください。
まとめ——「急ぐもの」から、慌てず一つずつ
| この記事のポイント |
|---|
| 死亡届は7日以内、世帯主変更・年金停止は10〜14日以内が目安 |
| 年金の停止が遅れて受け取り続けると、後で返還を求められる |
| 故人宛ての書類は財産調査の手がかり。迷ったら捨てずに保管 |
| 解約・名義変更を急ぐと、相続放棄ができなくなる場合がある |
| 迷ったら「期限が短いもの」から。費用は領収書を残して記録 |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。




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