銀行はなぜ嘘の書類を信じたのか──スルガ銀行不正融資問題

闇々不動産

スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を置く地方銀行だ。

創業は1895年(明治28年)で、100年以上の歴史を持つ老舗だ。

2010年代、スルガ銀行は金融業界の「スター」だった。

地方銀行が苦しむ低金利時代に、際立って高い収益性を維持していた。

「個人向けローンに特化した独自戦略」として各種メディアに取り上げられ、経営学の事例として大学の授業でも紹介されるほどだった。  

「なぜスルガ銀行はそんなに稼げるのか」

──この疑問を真剣に追究した人間が、もっと早い時期にいれば、事件の被害は小さかったかもしれない。

ラボ子

「なんでそんなに儲かるのか」って疑問、すごく大事なんだよね。
異常にうまくいってるビジネスには、必ず理由がある。
そこを考えなかった時点で、もう違和感を見逃してる。

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不正の全貌──書類改ざんの連鎖

スルガ銀行の不正融資問題が明らかになったのは、「かぼちゃの馬車」問題の調査が進む過程だった。

投資家たちの融資書類を精査すると、明らかな異常が見つかった。

通帳の残高が改ざんされていた。年収証明書の数字が変えられていた。

本来なら存在しないはずの多額の預金残高が記載された通帳のコピーが、審査書類として提出されていた。

これらの書類改ざんは、シェアハウス販売会社(主にスマートデイズ)や、融資の仲介を行ったブローカーが行っていた。

本来なら融資審査を通らないような顧客に対し、書類を改ざんして融資を受けさせていたのだ。

問題の核心は、スルガ銀行の行員がこれを「黙認」していた、あるいは積極的に関与していた疑いがある点だ。

金融庁の検査(2018年実施)で明らかになったのは、スルガ銀行の行内で強烈な「融資目標」が課されていたという事実だ。

支店長から各担当者まで、融資額の目標を達成することへのプレッシャーが異常なほど強かった。

目標を達成できない行員は降格や転勤などの不利益を受けた。

このプレッシャーの中で、行員たちは書類の問題を見て見ぬふりをした。

あるいは仲介業者に「融資が通るように書類を準備してくれ」と示唆した可能性も指摘されている。

組織的な圧力が、個々の行員の良心を押しつぶしたのだ。

ラボ子

不正って、いきなり始まるわけじゃない。
「これくらいなら」という小さな妥協の積み重ねなんだよね。
それを止められない組織になった時点で、もうアウト。

なぜ高収益が可能だったのか──闇の利益構造

スルガ銀行の融資金利は他行より高かった。

一般的な住宅ローンが年率1パーセント前後の時代に、スマートデイズ関連の融資では年率3〜4パーセント程度の金利が設定されていたとされる。

また、「他行が断る案件にも融資する」というビジネスモデルは、短期的には高収益をもたらした。

審査基準を下げれば融資件数は増える。金利も高い。不良債権が顕在化しないうちは、損益計算上は非常に「優秀」に見える。

しかしこれは、不良債権という爆弾を積み上げていく行為だ。かぼちゃの馬車問題が発覚し、投資家の返済能力が著しく低下した時点で、爆弾が爆発した。

融資の審査をどれだけ丁寧に行うか、不良債権をどれだけ抑えるかは、銀行の健全性の根本だ。

しかしスルガ銀行は、短期的な収益のために長期的な健全性を犠牲にした。

そしてその損失は、最終的には融資を受けた個人投資家たちが最も重く被ることになった。

ラボ子

数字が良い=安全、じゃないんだよね。
その利益が「どこから来てるか」がすべて。
無理して出した利益は、必ずどこかで破裂する。

制裁と再建

2018年10月、金融庁はスルガ銀行に対し、シェアハウス関連のローンを含む一部業務の停止命令を出した。同年、会長・社長が引責辞任した。

翌2019年、スルガ銀行は投資家たちとの交渉を開始し、一部の案件では債権放棄を含む和解が成立した。

しかしすべての投資家が満足のいく解決を得たわけではなかった。

スルガ銀行は現在も経営を続けているが、信頼の回復には長い時間がかかっている。

「地銀の優等生」という輝かしいイメージは、完全に失われた。

この章の教訓

「銀行が融資してくれた」は投資判断の根拠にならない。

銀行の審査を自分の代わりの投資判断と思ってはいけない。

融資の書類に関して「数字を少し変えてください」と言われた場合、それは犯罪への加担であることを認識すること。

また、銀行が「非常に積極的に融資してくれる」場合、その裏に何らかの問題がある可能性を疑うべきだ。

ラボ子

「銀行がOKしたから安心」は、一番危ない思考だよ。
最終的に責任を取るのは、銀行じゃなくて自分。
その前提を外した瞬間、判断は全部ズレる。

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