トラブル事例と回避の実務【契約と決済の実務⑤】

契約と決済の実務

不動産取引において、トラブルは「特殊なケース」で起きるものではありません。むしろ、日常的に起こりうるものです。

現場で数多くの契約を扱っていると分かりますが、トラブルの大半は予測可能です。にもかかわらず、それが防げないのは「想定していない」「準備していない」「伝えていない」この3つのいずれかに原因があります。

初心者ほど、「自分は丁寧にやっているから大丈夫」と考えがちです。しかし実務では、丁寧さだけでは防げません。必要なのは、リスクを前提とした設計です。

例えば、引渡し後に設備の不具合が発覚し、「そんな話は聞いていない」とクレームになる。あるいは、境界の認識違いから隣地とのトラブルに発展する。このようなケースは、特別な事例ではなく、どの営業にも起こり得ます。

トラブルを避けるためには、成功事例よりも失敗事例を理解することが重要です。なぜなら、失敗のパターンは再現性が高いからです。

この章では、現場で実際に起きたトラブルをベースに、その原因と回避方法を具体的に整理します。

ラボ子

トラブルって特別なことじゃないよ。
想定してない・準備してない・伝えてない、それだけ。
最初から起きる前提で設計しておこうね。


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■ トラブルは「事前共有不足」と「認識のズレ」で必ず発生する

トラブルの本質はシンプルです。事前に共有されていないこと、または当事者間で認識が揃っていないことが原因です。

不動産取引では、売主と買主の立場が大きく異なります。売主はリスクを減らしたい、買主はリスクを避けたい。この前提の違いがある以上、何も調整しなければ必ずズレが生まれます。

このズレが表面化するタイミングが、引渡し後です。契約時点では問題にならなかったことが、実際に物件を使い始めてから顕在化します。

例えば、雨漏り、設備不具合、境界の曖昧さ、これらはすべて「後から気づく」ものです。そして、そのときに初めて「誰の責任か」という話になります。

つまりトラブルは、起きてから対応するものではなく、起きる前に潰すものです。

営業として重要なのは、「この案件で何が問題になるか」を事前に想像する力です。そしてその想像を、説明と特約に落とし込むことです。

ラボ子

トラブルの正体は「ズレ」だよ。
共有してないか、認識が揃ってないか。
だから起きる前に、全部すり合わせておこうね。


■ 引渡し後に50万円の設備トラブルが発生したケース

ある中古戸建の売買で、引渡し後に給湯器の故障が発覚しました。交換費用は約50万円です。

売主は「現況有姿だから責任はない」と主張し、買主は「生活に必要な設備なので保証されるべき」と主張しました。結果として、双方の関係は悪化し、最終的には業者が一部負担する形で解決しました。

このトラブルの原因は明確です。設備に関する説明が曖昧だったことです。

契約書には「現況有姿」と記載されていましたが、具体的にどの設備が対象で、どこまで免責されるのかが明記されていませんでした。また、契約前の説明でも、給湯器の状態について詳細な共有がされていませんでした。

もし事前に、

・給湯器の使用年数(例:15年)
・不具合の有無
・引渡し後の責任範囲

を明確にしていれば、このトラブルは防げました。

この事例から分かるのは、「分かっているだろう」という前提が最も危険だということです。

ラボ子

「分かってるよね」は一番危ないよ。
設備は年数・状態・責任まで全部言葉にしてね。
曖昧なままだと、そのまま揉めるから。


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■ 境界未確定で決済が2ヶ月遅延した事例

土地売買において、境界が未確定のまま契約を締結したケースです。

契約時には「売主負担で確定測量を行う」という条件でした。しかし、隣地所有者の立会いが得られず、測量が進みませんでした。

結果として、引渡しは当初予定から約2ヶ月遅延しました。買主は建築スケジュールが狂い、売主は資金計画に影響が出ました。

このトラブルの原因は、「測量ができない場合の対応」を決めていなかったことです。

実務では、

・立会いが得られない場合の扱い
・現況測量で引渡すのか
・価格調整を行うのか

といった判断を事前に決めておく必要があります。

境界問題は、不動産取引において非常に頻出するリスクです。それにもかかわらず、軽視されることが多い領域でもあります。

この事例は、「やる前提」で進めることの危険性を示しています。

ラボ子

「やる前提」だけじゃ足りないよ。
できなかったとき、どうするかまで決めておこう。
境界は止まる前提で設計してね。


■ 実務の流れ

トラブルを防ぐための実務は、以下の流れで行います。

工程 内容 実務ポイント
① 物件リスクの洗い出し 設備・境界・権利関係の確認 見落としがそのままトラブルになる
② 過去事例の参照 類似案件のトラブル確認 再現性のあるリスクを先読みする
③ 事前説明 売主・買主へリスク共有 隠さず伝えることで後の揉めを防ぐ
④ 特約設計 対応方法の明文化 責任の所在を具体的に決める
⑤ 契約前の最終確認 認識ズレのチェック 曖昧な点を残さず潰す
⑥ 記録の保存 説明内容の記録化 後日の証拠として有効

この流れを徹底することで、トラブルの発生確率は大きく下がります。


■ 実務メモ

ラボ子

トラブルは防ぐものだよ。
想定して、具体的にして、ちゃんと残す。
この3つやっておけば、ほとんど崩れないからね。

・トラブルは必ず起きる前提で考える
・曖昧な説明をしない
・リスクは隠さず伝える
・特約で具体的に整理する
・記録を残しておく


■ よくある失敗

ラボ子

「大丈夫だろう」が一番危ないよ。
伝えて、理解してもらって、ちゃんと残す。
この基本を外さなければ、ほとんど防げるからね。

最も多い失敗は、「問題を軽く見ること」です。「大丈夫だろう」という感覚で進めると、後で必ず問題になります。

次に多いのが、「説明不足」です。説明したつもりでも、相手が理解していなければ意味がありません。

また、「特約の未整備」も典型的なミスです。口頭での合意だけでは、後で証明できません。

これらを防ぐためには、

・最悪のケースを想定する
・具体的に説明する
・書面で残す

という基本を徹底することが重要です。


■ まとめ

トラブルは避けるものではなく、管理するものです。

完全にゼロにすることはできませんが、発生確率を下げることはできます。そしてその鍵となるのが、事前の想定と共有です。

不動産営業として成長するためには、成功体験だけでなく、失敗事例を深く理解することが不可欠です。なぜなら、同じミスは繰り返されるからです。

重要なのは、「この案件は大丈夫」と考えるのではなく、「どこにリスクがあるか」を考える姿勢です。

トラブルを経験してから学ぶのでは遅いです。先に学び、先に防ぐ。その意識が、長く安定して成果を出し続ける営業を作ります。

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