高値査定が起きる理由

不動産会社の裏側と業界構造

売主が複数の不動産会社に査定を依頼したとき、一番高い価格を提示した会社が媒介を取りやすい——この構造が「高値査定競争」を生み出します。

なぜ高値査定が起きるのか、その後に何が起きるのか、誠実な査定はどうやって戦うのか。

業界の構造的な問題として根深く残るこのテーマを、メカニズムから解剖します。

ラボ子
高値査定って「売主のために高く見積もってる」わけじゃなくて、「媒介を取るための手段」なんだよね。その構造を知っておくと、査定の場面での見え方がぜんぜん変わるよ。

媒介獲得競争という構造的圧力

不動産仲介会社にとって、売主から「媒介契約」を取ることは収益の出発点です。

媒介がなければ物件を扱えず、売上も生まれません。

複数の会社が同じ物件の媒介を競っている場面では、「どの会社に依頼するか」の判断は多くの場合、売主の「高く売りたい」という気持ちに働きかけた会社に傾きます。

「うちなら○○○○万円で売れます」という高い査定価格を見た売主は、自然とその会社に親近感を持ちます。

「自分の物件の価値を一番高く評価してくれた会社」という印象が、媒介契約の選択につながります。

競合他社が現実的な価格を提示していても、「あそこは低すぎる」と判断されてしまうのです。

この構造が、誠実な査定をする会社を不利にします。

市場価格に基づいた正確な査定をすれば媒介を取り損ねる。

高値で釣れば媒介は取れるが、後から値下げを余儀なくされる。

この矛盾の中で、「媒介を取ることを優先して高値査定をする」という行動が繰り返されます。

【業界の裏側】 「釣り上げ査定」と呼ばれる慣行の実態

業界内では「釣り上げ査定」という言葉が使われることがあります。意図的に高い価格を提示して媒介を取り、その後の交渉で値下げに誘導するやり方です。最初から値下げを想定した上で高く出す——これは売主への誠実な対応とは言えません。

しかし、「みんなやっている」という環境の中では、誠実な査定をする会社が「低すぎる会社」として弾かれる現実があります。この構造が変わるためには、売主側が「高値査定=良い会社」という誤解を解くことが第一歩です。

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高値査定の「その後」——値下げの泥沼

高値査定で媒介を取った後に起きることは、多くの場合「売れない期間の長期化」と「値下げ交渉の泥沼」です。

市場価格より高い価格で出した物件は売れません。

問い合わせが来ても、実際に見た買主が「割高だ」と判断して離れていきます。

数ヵ月が経過すると、売主は「なぜ売れないのか」と焦り始めます。

この段階で営業マンは「価格を下げませんか」という提案をしなければなりません。

最初に「高く売れます」と言った手前、この提案は非常に言い出しにくい。

しかし言わなければ物件は売れ続けない。

この板挟みが、長期化した案件で営業マンが最も消耗する場面のひとつです。

時期 売主の状況 営業マンの状況
契約直後 高値査定に期待感 媒介獲得に達成感
1〜2ヵ月後 問い合わせの少なさに不安 値下げを切り出せずに焦り
3ヵ月以降 「なぜ売れないのか」と不満・焦燥 値下げ提案・板挟みで消耗
大幅値下げ後の成約 当初査定より低い金額で売却 信頼を失い、次の紹介につながらない

最終的に大幅な値下げで成約したとき、売主が受け取る金額は当初の査定価格より大幅に低くなっています。

もし最初から現実的な価格で出していれば、より早く・より高い価格(市場価格)で売れたかもしれない——この「機会損失」が、高値査定が生む最大の被害です。

誠実な査定をするためのアプローチ

業界の中で「誠実な査定」を貫く営業マンは、どうやって高値査定競争に対抗しているのでしょうか。

多くのベテランが共通して語るのは「根拠の説明力」です。

単に「この価格で売れます」と言うのではなく、「なぜその価格なのか」を具体的に説明できる営業マンは、売主の「理解と信頼」を得られます。

説明の要素 具体的な伝え方の例
成約事例の根拠 「このエリアの直近成約事例ではこの価格帯が多い」
物件の弱点の開示 「日当たり・築年数を考慮するとこの価格が現実的」
成約スピードの見通し 「この価格で出せば、平均○週間での成約が見込める」

こういった根拠の積み上げで説明できる営業マンは、高値査定の会社と戦えます。

短期的に媒介を取り損ねても、誠実さで選ばれる関係を作ることが、長期的な競争力の源になります。

ラボ子
「なぜその価格なのか」を説明できる営業マンって、売主からすると圧倒的に信頼できるんだよ。根拠のある話をしてくれる人って、それだけで「ちゃんとした人だ」ってわかるから。

【営業マン視点】 「負けた査定」が長期的な勝ちになる

誠実な価格を提示して媒介を取れなかったとき、その場では「負け」に見えます。しかし数ヵ月後、「あの会社に頼んだら全然売れなくて、結局値下げした」という話が売主から聞こえてくることがあります。

そのとき「最初に正直に言ってくれたのはあの会社だった」と思い出してもらえれば、次の案件が来ます。また、誠実な説明をした場面を売主が知人に話してくれることもある。「一度断られた媒介」が、長期的な紹介の起点になることは珍しくありません。

まとめ:高値査定の「構造」を知ることが、誠実な営業の出発点

高値査定が起きる理由と、その後の流れを整理します。

ポイント 内容
なぜ起きるか 媒介獲得競争で「高値提示=選ばれやすい」構造があるから
その後の現実 売れない→値下げ→機会損失という泥沼に陥る
誠実な戦い方 「根拠のある説明力」で売主の理解と信頼を勝ち取る

次の記事では、「不動産会社同士の力関係」について解説します。

大手・中堅・地場業者が水面下でどう動いているか、業界の構造がさらに立体的に見えてきます。

ラボ子
高値査定の構造、リアルに見えてきたかな?次は不動産会社同士の力関係だよ。業界の表と裏が見えてくる話だから、引き続き読んでみてね。

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