相続には、「いつまでに」という期限のある手続きがいくつもあります。
そして、その期限を1日でも過ぎると、選べたはずの選択肢が選べなくなったり、余計な税金やペナルティが発生したりします。
「知らなかった」では済まされないのが、相続の期限の怖いところです。
ご相談の現場でも、「もう少し早く知っていれば」と悔やまれる方を、何度も見てきました。
逆に言えば、この期限さえ最初にカレンダーへ書き込んでおけば、致命的な失敗の大半は防げます。
この記事では、相続で必ず押さえておきたい4つの期限を、わかりやすく整理します。
相続が始まったら、まずこの記事の期限を起点に、逆算してスケジュールを組んでください。

相続の手続きには「期限」がついている
相続にまつわる手続きの多くには、法律で期限が定められています。
この期限が、ほかの一般的な手続きと大きく違うのは、「過ぎたら取り返しがつかない」ものが含まれている点です。
たとえば、借金の方が多い相続で「放棄したい」と思っても、期限を過ぎていれば、原則として放棄はできなくなります。
相続税の申告が遅れれば、本来は使えたはずの軽減措置が受けられなかったり、加算税・延滞税といった余計な負担が生じたりします。
だからこそ、相続が始まったら、まず「期限のある手続き」を真っ先に押さえることが大切です。
期限さえ把握しておけば、あとは逆算して動くだけです。
まず押さえたい4つの期限
相続で覚えておきたい期限は、大きく次の4つです。
| 期限 | 手続き |
|---|---|
| 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の手続き |
| 4ヶ月以内 | 準確定申告(被相続人の所得税の申告) |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 |
| 3年以内 | 相続登記の申請(2024年4月から義務化) |
3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月は、いずれも「相続の開始を知った日」を起点に数えます。
登記の3年は、「不動産を相続で取得したことを知った日」が起点です。
このうち、最初に来る「3ヶ月」が、最も注意を要する期限です。
順番に、それぞれの中身を見ていきましょう。
「3ヶ月の壁」——相続放棄ができる期限
4つの期限の中で、最も取り返しがつきにくいのが「3ヶ月」です。
相続を知った日から3ヶ月以内に、相続を「承認する」か「放棄する」かを決めなければなりません。
借金などマイナスの財産の方が多く、放棄を選ぶなら、この3ヶ月以内に家庭裁判所での手続きが必要です。
この期間を過ぎると、原則として「すべてを引き継ぐ(単純承認)」を選んだものとみなされ、後から放棄するのは難しくなります。
注意したいのは、3ヶ月の起点が「亡くなった日」ではなく、「相続の開始を知った日」である点です。
とはいえ、悲しみの中で財産や借金の全体像を3ヶ月で把握するのは、決して簡単ではありません。
調査が間に合わないときは、期間を延ばす申し立て(熟慮期間の伸長)という方法もあります。
マイナスの財産が疑われる場合は、早い段階で家庭裁判所や専門家に相談しておくと安心です。
「4ヶ月・10ヶ月の壁」——税金にまつわる期限
次に来るのが、税金に関する2つの期限です。
1つ目は「4ヶ月」の準確定申告です。
亡くなった方に、事業所得や不動産所得など確定申告が必要な所得があった場合、相続人が代わりに申告します。
2つ目は「10ヶ月」の相続税の申告・納付で、4つの期限の中で最も金額の影響が大きいものです。
ここで押さえておきたいのは、相続税は「かかる人」と「かからない人」がいるということです。
基礎控除の範囲内であれば、そもそも申告も納税も不要なケースが多くあります。
一方で、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、「特例を使うために申告が必要」になる点に注意が必要です。
準確定申告や相続税の申告は、税理士が専門とする領域です。
申告が必要になりそうなら、10ヶ月という期限から逆算して、早めに相談先を確保しておくと、慌てずに済みます。
【業界の裏側】 「3ヶ月の壁」を知らずに、放棄のタイミングを逃しかけた相続
あるご相談で、印象に残っているケースがあります。お父様が亡くなり、ご家族は「めぼしい財産は古い実家くらいだろう」と考えて、しばらく手続きを後回しにしていました。ところが数ヶ月後、見知らぬ業者から督促状が届き、調べてみると、お父様が知人の借金の連帯保証人になっていたことが判明したのです。このとき、すでに相続を知った日から3ヶ月が近づいていました。さらに困ったのは、ご家族が遺品整理の流れで、故人の預金の一部を解約して使い始めていたこと。財産を処分する行為は「単純承認した」とみなされることがあり、放棄が認められにくくなる場合があります。最終的には専門家を交えて対応しましたが、ぎりぎりの綱渡りでした。マイナスの財産が少しでも疑われるなら、財産にむやみに手をつける前に、まず全体を調べる——この順番を守るだけで、選べる道が大きく変わります。3ヶ月という期限は、想像以上にあっという間に過ぎていくのです。
「3年の壁」——相続登記の義務化と過去への遡及
4つ目が、2024年4月から始まった相続登記の義務化です。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しないと、正当な理由がない限り、10万円以下の過料が科される可能性があります。
これまで「面倒だから後回し」で済まされてきた名義変更が、放置できない手続きに変わったということです。
さらに重要なのが、このルールは過去の相続にもさかのぼって適用される点です。
義務化の前に発生した相続も対象で、その場合は2027年3月末までが、ひとつの申請の目安になります。
何代も前の名義のままになっている実家を抱えている方も、いずれ対応を迫られることになります。
「うちは古い相続だから関係ない」と思っている方こそ、一度、名義の状態を確認しておくことをおすすめします。

【営業マン視点】 私がお客様に「まずカレンダーに4つだけ書いてください」と伝える理由
期限の話をすると、お客様はたいてい不安そうな顔をされます。やることが多いうえに、それぞれに締め切りがあると聞けば、当然です。そんなとき私は、いきなり全部を説明するのではなく、「まずはカレンダーに、4つだけ日付を書き込みましょう」とお伝えしています。亡くなった日を起点に、3ヶ月後・4ヶ月後・10ヶ月後、そして登記の目安。この4つに丸をつけるだけで、頭の中がすっと整理されます。漠然と「急がなきゃ」と焦るのと、「この日までにこれをやればいい」と分かっているのとでは、心の余裕がまるで違うからです。相続は、やるべきことを正しい順番で、期限から逆算して進めれば、決して乗り越えられないものではありません。不安を行動に変える最初の一歩として、私はいつも、この「4つの日付」をおすすめしています。
まとめ——4つの期限を「起点」にスケジュールを組む
| この記事のポイント |
|---|
| 相続の期限は「3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年」の4つを押さえる |
| 3ヶ月は相続放棄の期限。過ぎると原則すべて引き継ぐ扱いになる |
| 4ヶ月は準確定申告、10ヶ月は相続税の申告・納付の期限 |
| 登記は3年以内が新ルール。過去の相続も対象で目安は2027年3月末 |
| 期限はすべて「知った日」が起点。まず4つの日付をカレンダーに書く |

宅建士資格保有・不動産業界歴10年以上の現役実務者が監修・運営しています。
売買・法律・税金・開業まで、現場の実務経験をもとに情報を発信しています。



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